May 9, 2003

ウェブログに見る日米個人サイトコミュニティ事情

ZDNN:アンカーデスク 2003年5月7日 07:28 PM 更新

その言葉がニュースに登場しない日はないほど、話題になっているブログ(ウェブログ)。だが、日本での普及はまだまだという感がある。この差はどこからくるのか、そしてこれから普及する可能性はあるのか。ウェブログを軸に、日米個人サイトを取り巻く状況の違いを考えてみたい

 「ウェブログ(Weblog)」、または「ブログ(blog)」と呼ばれる個人運営のWebサイトが海外のニュースサイトを中心に話題になってからずいぶん経つ。

 「個人のWeb日記」から「興味深いWebサイトへのリンクリスト」、あるいは「新しいジャーナリズム」まで、書き手によってさまざまに定義されるウェブログだが、もともとは1997年から1998年にかけて、米国のネットユーザーたちがネットサーフィン中に発見した面白いWebページへのリンクリストをWebサイト上でまとめ、日々更新するようになったのが始まりだ。

 Webコンテンツが加速度的に増加する中、豊富なWeb資源の中から個人の視点で面白いページをピックアップするウェブログは、読者にとってWWWの大海における羅針盤的な役割を果たし、同時発生的にこの種のサイトが立ち現れるようになった。1999年初めには数十のウェブログがコミュニティを形成するまでに成長した。

 もっともウェブログがこれだけのものならば、現在のように海外のニュースサイトや新聞・テレビなどのマスメディアでひんぱんに取り上げられ、話題を集めることはなかっただろう。実際、これらの翻訳記事を読んで「日本の個人サイトとどう違うのか」といぶかしむ日本のネットユーザーも多い。

 そこで本稿では、日本と米国の個人サイトコミュニティの成立事情を振り返り、ウェブログと日本の個人サイトはどう違うのか、あるいはウェブログ文化が日本のWeb文化に何をもたらしうるかについて考えてみたい。


ウェブログはなぜ注目を集めたか

 日米Web文化の草創期を振り返るときに、大きく事情を異にするのが商用オンライン・マガジンの存在である。

 インターネット先進国である米国では、早くから高品質なオンライン・マガジンがいくつも登場し、Web上で大きな存在感を放っていた。1994年には早くも「HotWired」が、1995年には政治から文芸まで扱う総合文化誌「Salon」、マイクロソフトが支援する「Slate」、技術系ニュースサイト「CNET」がスタートした。

 こうした媒体での執筆活動を生業にするオンライン・ジャーナリストなる職業も成立するほど、企業主導のオンライン・マガジン文化は隆盛を誇っており、コンテンツ、デザインともに見劣りせざるを得ない個人運営のWebサイトが注目を集めることはまれであった。

 一方日本では、1994~1995年のWeb黎明期において商用オンライン・マガジンに米国ほどの投資を行う企業はほとんど存在しなかったために、必然的に個人の趣味で運営される小規模なサイトが初期のWeb文化を担うこととなった。

 その中でも目立った活動をしていた若者たちがメーリングリストを中心に互いに連絡を取り合うようになり、結果として早くから個人サイト・コミュニティが育まれていった。これらのコミュニティはネット人口が増えるにつれて次々に分裂していき、今に至るまで細分化された幾多のコミュニティがWeb上に遍在している。

 日本のWeb黎明期を同人誌マーケットにたとえるなら、かつての米国で個人サイトを運営するということは、商用雑誌がズラリと並べられた書店で同人誌を売るようなものだったに違いない。

 この流れに一石を投じたのがウェブログである。もはやすべてを把握できるひとはいないほどにWebコンテンツがあふれてきたとき、個人の趣味に沿うページを紹介するWebコンテンツ・ナビゲーターとしてのウェブログが、初めて個人サイトとして注目を浴びるようになったのだ。


ウェブログの発展

 1999年、米国初の大規模な個人サイト・コミュニティとして立ち上がったウェブログは、その後も順調に読者と同好のサイトを集めて成長し、やがて商用オンライン・マガジンのライターや編集者たちの目に触れるようになった。

 そして彼らはウェブログを批判した。それらはあまりに子供じみていて、そのくせ尊大で(ときには企業ニュースサイトの記事に難癖をつけることがあったからだ)、リンクを張るだけの手軽さでプロが苦心して作り上げたWebコンテンツと渡り合おうとしている忌々しい存在に見えたのだ。

 もちろんこれらの批判にウェブログ・コミュニティの住人たちは反発し、一つの批判記事をめぐって大いに議論を戦わせた。この議論もまた、彼らの結束を固める下地になった。

ブログツールの登場

 この時点ではネットマニアによる箱庭的なムーブメントに過ぎなかったウェブログだが、この流れを大きく変えたのが、1999年8月に登場したCGIによるウェブログ作成ツール「Blogger」である。

 BloggerがそれまでのWeb日記作成ツールに比べ画期的だったのは、商用オンラインマガジンや企業ニュースサイトに近いインタフェースを提供していたことだ。

 トップページを3つのエリアに分け、ヘッダとページ横のナビゲーションバーがメインコンテンツエリアを取り囲むという、今では個人サイトでもおなじみのレイアウトは、1996年に「HotWired」が編み出し、他のオンラインマガジンやニュースサイトも相次いで採用したインタフェースである。

 初期に登場したいくつかのブログもこのデザインを踏襲しており、Bloggerがデフォルトでこのレイアウトのテンプレートを提供したことは、同ツールが私的な日記ツールではなく、企業サイトと肩を並べうる個人用パブリッシングツールであることを印象付けた。

 また、テンプレートを変更するだけでほぼ思い通りのスタイリッシュなデザインを構築できる柔軟性も人気を呼んだ。このデザインの柔軟性はその後登場したほとんどのウェブログ作成ツールに共通している特徴である。

 Bloggerの登場はウェブログ人口を爆発的に増やし、もはやウェブログはネットマニアだけのものではなくなった。結果、Bloggerを用いて運営されるごく私的な日記がウェブログの大部分を占めるようになり、本来「日々更新される興味深いWebページへのリンクリスト」の意味合いで使われていたウェブログの定義は混乱した。

 ジャーナリストたちはいくつかのウェブログを見て、「ウェブログは個人の日記である」と結論づけた。これに反発するウェブログもあったが、2000年に入ると英国のガーディアン紙のように自サイト内でウェブログを運営したり、ウェブログの記事を情報源として活用するメディアも現れ、両者は次第に歩み寄りを見せるようになった。同時に、高機能なウェブログ作成ツールが続々と産み出され、Webページの紹介にとどまらないさまざまなスタイルのウェブログが登場し、ブログ界(blogosphere)は多様化していった。


米国同時多発テロ事件とウェブログ

 2001年、ウェブログの認知度を一般レベルまで引き上げる大事件が起こった。9月11日の米国同時多発テロ事件である。

 不安にかられた人々は情報を追い求め、各マスメディアは連日連夜、事件に関するあたうる限りの報道を行った。情報の洪水の中で、人々は真に読むに値する良質な情報のみを欲するようになった。そこで脚光を浴びたのがウェブログである。

 事件が勃発するやいなや、いくつものウェブログがテロ事件のリンク集を作成した。そこにはリテラシーの高い個人の眼で選ばれた良質な情報へのリンクがあり、人々はこうしたウェブログへ殺到した。

 さらに自らのテロ体験を生々しく記録したレポート、現地住民が撮影した動画、血液提供の呼びかけ、無事を知らせる短い書き込みといったマスメディアでは得られない情報がウェブログ上を飛び交い、さらなる情報を求める人々に応えた。

 事態が落ち着くにつれ、ウェブログ界に2つの動きが現れた。まずは「warblog(ウォーブログ)」と呼ばれる新しいタイプのウェブログの登場だ。これはテロ関連、戦争関連のトピックを中心とするウェブログ一般を指し、国家的な事件に際して自身の意見を述べずにはいられない人々によって運営されていた。

 もう1つはプロのライターや学者、ジャーナリストたちの参入だ。テロのときに見せたウェブログの機動性は、すでに発表媒体を持つプロの書き手たちにとっても魅力的に映ったのだ。このようなウェブログにスポットライトをあて、ウェブログ現象をテロに対する反応として結論づけるメディアや、「ウェブログは新しいジャーナリズムである」と主張する人々も現れた。

 多くのウェブログ管理人たちは「ウェブログ=ジャーナリズム」説に否定的な態度を取っているが、このような言説が現れること自体、ウェブログがネット内のムーブメントにとどまらず、社会的な意義を帯びるものとして認知されていることは明らかだ。ウェブログは、「ウェブログ現象」という言葉が生まれるほどに、もはやメディアに関わるだれにとっても看過しがたい大きなムーブメントとなった。

 ウェブログ現象を社会的・文化的な側面から考察する『The Weblog Handbook』の著者、Rebecca Blood 氏は、ウェブログとジャーナリズムの違いを説きながら、ウェブログとは、リンクによって力を持たない個人が情報の伝播に関わることができる民主的なムーブメントだと主張している。

 リンクを張ってコメントを付けるというウェブログ運営の手軽さは、マスコミ関係者や学者のみならず、さまざまなバックグラウンドと知識を持つ多様な個人の声を表出させ、集約し、広めることを可能にし、よりよい情報が個人の選択眼により広がるようになった、と彼女は言う。


ウェブログムーブメントの現在

 ウェブログの社会的な認知度が上がったことで、ビジネス用途でウェブログを活用する企業も増えてきた。

 2002年5月、Webサイト制作ツールを開発しているMacromedia社が、自社の顧客担当者5人を抜擢して個人のウェブログを作らせ、広報活動に当たらせたのがその一例だ。

 2003年2月には、大手検索エンジンGoogleが「Blogger」の開発元Pyra Labs社を買収し、ウェブログを利用したより高度なWebのインデックス化が期待されている(関連記事)。

 アカデミズムの世界でもウェブログを活用しようという動きが出ている。2003年3月、ハーバード大学は大学内ブログ「Weblogs At Harvard Law」の立ち上げのために、有名なウェブログ「Scripting News」の運営者でSOAP、XML-RPCといった数々のプロトコルの開発者でもあるDave Winer氏を特別研究員に招き入れた。

 ウェブログ・コミュニティ全体の情報の流れをマクロに見渡すためのサービスもいくつか登場し、「ネット上で何が話題になっているか」を一目で把握することも可能になっている。

 その代表的な2つのサイトが「Blogdex」と「Daypop」だ。これらはシステムこそ違え、ウェブログ・コミュニティで話題になったトピックをリンクされた順にランキングしているサイトである。


日本の個人サイトコミュニティの現在――個人ニュースサイトを中心に

 日本では、1998年後半から1999年にかけて、ニュースや面白いWebページを独自の視点で集めて紹介するという、ウェブログに似たスタイルの個人サイト群が登場しはじめていた。これらは当初、企業ニュースサイトから記事をクリップすることが多かったことから、「個人ニュースサイト」と呼ばれ、この時期に1つのジャンルとして認識されるようになった。やがて企業が発信するニュースにとどまらない雑多な情報が扱われるようになり、日に10万-20万のアクセスを集める“大手サイト”もいくつか存在している。

 多くの個人ニュースサイトが、トップページをヘッダ、サイドバー、メインコンテンツエリアの3つのエリアに分けるという、標準的なウェブログとほぼ同じインターフェースデザインを採用していたことは特筆すべき事柄かもしれない。

 ブロードバンドの普及で日米両国の回線状況が似通ってきたこと、海外発のニュースサイトの洗練されたデザインに両者が影響を受けたこと、同種のサイト同士が互いを情報源として活用したためにコミュニティが発展し、相互に影響を与えあいながらより使いやすいインタフェースが模索されていったこと、といった共通の要素が、必然的に両者のスタイルを近づけたのだろう。

 ウェブログがそうであったように、初期の個人ニュースサイトが扱う内容は技術系、もしくはゲーム・アニメなどのオタク関連のニュースが多かったが、このスタイルのサイトが注目を集めたことから2000年後半以降は社会・サブカルチャー・芸能・海外ニュースと広範囲の情報が扱う個人ニュースサイトが続々と誕生し、今に至っている。

 また、個人の声を集約するシステムとして、大型掲示板サイト「2ちゃんねる」もまた、米国においてブログが果たしている役割のひとつを担っているといってもよいだろう。

 一方、Web黎明期から存在していた日記サイトについては、専用の無料ツールやレンタルサービスが数多く生まれ、それぞれ独自のコミュニティを築いてきた。その中にはブログに近い機能を提供する「tDiary」などの高機能なツールもあり、これらを利用したブログ的な日記も少なからず登場している。しかし個人ニュースサイトとは異なるコミュニティとして、相互参照されることは少ない。

 そしてこれこそは日本の個人サイト・コミュニティが海外のウェブログ・コミュニティと大きく異なる点だ。

 片や、ツールの登場によって同形態のサイトが一気に広まったために、企業をも巻き込んで1つの大規模なコミュニティとして社会的に認知されているウェブログ。片や、歴史が古いために小さなコミュニティが、統一されることなく独立して育った日本の個人サイト。

 この差異は、両者の社会的な影響力の違いとなって現れている。日本においては、初期のウェブログがプロのジャーナリストたちにそう見られていたように、個人サイトが取るに足らないアマチュアのお遊び以上のものと見なされることは少ない。

 まだまだ数は少ないが、Movable TypeやBloggerといった海外製のウェブログツールを利用して運営されている日本語のウェブログも増えている。

 こうした動きが活発化し、海外のウェブログ・コミュニティに融合していくのか、これまで同様独自の発展を続けていくのか、それはまだわからない。しかし米国におけるウェブログの成功を目の当たりにしたことで、個人Webパブリッシングに新たな可能性を見出した個人やITベンチャーの数は少なくないはずだ。

 彼らが今後どのような試みをしていくか、日本のWeb文化の発展はそこにかかっている。小さな存在が流れを作り、大きな奔流となって世界を変えうるWebの世界はまだまだ喜ばしき“黎明期”なのかもしれない。

Posted by sunouchi at 11:26 AM

April 25, 2003

新たなブロッグサービス立ち上げ

ZDNN:ニュース速報 2003年4月24日 08:49 AM 更新

Webログツール「Movable Type」の提供企業が、Googleのブロッグ部門と競合する新ホスティングサービスを立ち上げる

 人気Webログ(ブロッグ)ツール「Movable Type」の提供企業米Six Apartは、Googleのブロッグ部門と競合する新ホスティングサービス「TypePad」を立ち上げる。

 米国ではWebユーザーの間でブロッグの人気が上昇しており、Pyra Labsが保有していた人気ブロッグサイトのBloggerは最近Googleに買収されている。

 TypePadはMovable Typeを基盤とし、アーカイブツール、カスタマイズ可能なデザイン、写真などのメディアコンテンツをブロッグに添付できる機能が盛り込まれる。

 このサービスはテスト版が来月から開始される。同社は3つのレベルのサービスが登場予定だとしているが、料金に関する情報は明らかにしていない。

 Six Apartは今後新たな競争に直面することになりそうだ。ライバルのBloggerがソフトの新版に取り組んでいるほか、Lycosもブロッグソフトを提供しており、AOLとMicrosoftもブロッグツールに取り組んでいると報じられている。

Posted by sunouchi at 11:30 AM

March 6, 2003

Blogの祖、ハーバード大学研究員へ

Paul Festa(Staff Writer, CNET News.com)
2003年3月6日(木) 10時00分

米国で最も古い高等教育機関であるHarvard大学では、インターネット界の最新トレンドを取りこもうとしている。同大学の学生や教員たちがBlog(ブログ)を使えるようにするため、その領域では教祖とも言えるソフトウェア開発者Dave Winerを大学に招いたのだ。

 Harvard大学では、同大学内で立ち上げる新しいBlogサイト"Weblogs At Harvard"の陣頭をとってもらおうと、UserLand Softwareの元代表であるDave WinerをHarvard大学法学大学院のBerkman Center for Internet and Societyに特別研究員として迎えた。Winerは、Tulane大学で数学を学び、Wisconsin大学でコンピュータサイエンスの修士号を取得。Harvard大学では学生や教員に対し、ウェブの内容を日々更新する上での技術面の指導を行う。

 もともとWinerはカリフォルニア州ミルブレエにある米UserLand Softwareの代表を務めていた。UserLand Softwareはコンテンツパブリッシングツールやサービスに特化したソフトウェア会社である。WinerはSOAP、 XML-RPC、RSSや、OPMLといった数々のプロトコルの仕様の開発に寄与しており、インターネット上で最も長く運営されているBlogの1つ、Scripting Newsを立ち上げた人物として、最もよく知られていることだろう。

 現在はマサチューセッツ州ケンブリッジにある事務所で、Harvard大学内に既設のBlogサイトを再編成している。その事務所でCNET News.comのインタビューに答えてくれた。

――初めて目にしたBlogはどのようなものでしたか?

 最初は、見たというよりも私が作ったという感じですね。きっかけは1996年2月、私がWiredの寄稿編集者だった頃、米国通信品位法(Communications Decency Act)に対抗するために24 Hours of Democracy Projectと言う企画を立ち上げたのですが、その時に発生した作業の一部が後にBlogとなったのです。私たちにはその頃スポンサーが付き始め、数々のオンラインサービスの企画が持ちこまれていました。そこで、それらを整理するために逆時系列順で並べてウェブに載せようと考えたのです。しかし始めてみて「これは使える。このプロジェクトが終ったら、この機能を形にできないか検討してみよう」と考えたわけです。

 当時はそれをBlogと呼んではいなかったのですが、ほぼ現在のBlogと同じものです。最初は、UserLand Softwareの製品であるFrontierの機能として作りました。当時、私はUserLandのCEOでしたからね。それから1年後の1997年4月、Scripting Newsというサイトを開設しました。このサイトは、おそらくインターネット上で最も長く運営されているBlogでしょう。少なくとも5本の指くらいには入ると思います。最も長いと言われていたものが実は違っていたという話は、インターネット上ではよくあることですから。

――どのようにしてBlogと呼ばれるようになったのですか?Blogという媒体、あるいはフォーマットはどのようにして進化したのでしょうか?

 毎年Blogは成長しています。この名前を思いついた人は、Robot Wisdomと呼ばれるBlogを運営しているJorn Bargerです。

 現在では多くの人がBlogサイトを開設していますし、私たちがBlogを作りやすくするツールの提供に取り組んでいるので、サイトもどんどん開設しやすくなってきています。また、インターネットも昔に比べて使いやすくなりました。Blogは最終的に電子メールや、文書作成ソフトのような基本的なスキルとなるでしょう。そのうち、作文などと同じになるはずです。だから私は今、大学にいるのです。学生と教員が皆使い方を学び、その人たちがまたその生徒に教えていく。ここでの仕事は、そういう長期的展望の下に準備しています。

――では、Harvard大学法学大学院に来ることになったきっかけは?

 きっかけといっても、あっという間に決まったことですから。私は何年も商業ベースのソフトウェア開発に携わってきていたので、この辺で何か違うことをしたいと思っていましたし、Harvard大学では学内の部門間で情報を共有することに大変興味を持っていました。昨年末、デジタル時代におけるHarvard大学のアイデンティティを確立しようと会議を開催した時にこの企画が持ちあがったようです。Harvard大学は、小さい核の部分と、経営・政治・文学など分散されたたくさんの学校の集合体という、とても大きな大学です。そう言った意味では各部署に分かれている企業と同じようなものなのです。いかに部署同士で共同作業を行い、そして無駄な労力を省くために情報を共有するかを企業は考えますよね。実はここの大学でも同じ問題を抱えていたのです。

 先の会議で挙がった解決策はBlogの持つ機能とほぼ同じでした。そのため、多くの人から「Daveに話を持ちかけてみるべきだ」と言われたそうです。一方で私はたまたまクリスマスシーズンに東海岸側にいましたので、そのままボストンへ行き、そこで特別研究員の話をもらいました。

――それにしても、Harvard大学でまだBlogが立ち上がっていないとは信じがたいですね。

 大学全体を見ればBlogサイトは10個程度ありますが、正直なところどれもまだ初歩的なものばかりです。大学で行われている様々な研究や、その成果をもっと組み込んだものでなければならないと思っています。私は大学全体を任されているのです。Blogへの参加を強制するつもりはなく、Blogをやってみたいと思っている人に参加してもらいたいと思っています。もし内容の充実したBlogサイトが100個できればとても満足だし、きっと大学の皆さんにとっても嬉しいことだと思います。

――Harvard大学ではどんな役割を?

 私はBlogという新しいコミュニケーションツールの伝道師であり、教育者であり、研究者であると思います。私が人に教えるだけでなく、学ぶこともできればいいかなと思っています。ここ何年もソフトウェア開発者としてやってきたので、ユーザー側とのコミュニケーションはほとんどありませんでした。その上、持ちあがる問題のほとんどが技術的なことばかり――これはどうやって動いているのか、このソフトの主な特徴は何か、ソフト同士の接続はどうなっているのか、といったことです。これからは開発者という枠を乗り越えて、ユーザーの反応を見たいと思っています。改善には何が必要なのか、そのための障害は何か、といったことです。その上で社会から学習したものを共有していきたいと考えています。あなた方も取材から学んだことを人々に伝えるということをしているでしょう?

――Webサービスに欠けているものはそれぞれの個性であって、商業アプリではないとおっしゃっていますね。

 企業の提供するWebサービスは、非常に充実していると言えます。お金を動かしたり、商品の売買にインターネットを利用することは何も間違ってはいません。ただ、インターネットの利用価値はそれだけではないですし、こういった使い方はあまり魅力あるものとはいえません。私が考えているWebサービスとは、充実したBlogサイトを開設するために、ライティングツールを使ってサーバアプリケーション同士を接続させる方法なのです。すでに世の中にはSOAP、XML-RPC、RSSやOPMLを使ったツールが出回っています。つまり今は、より多くの情報源から情報を読めるように、Blogやその集合体を作るための便利なライティングツールを作成している状況なのです。

――情報を共有する、という意味においてBlogはどのような影響があったのでしょう?特にジャーナリズムにおいて、どのように影響を与えたでしょうか。

 ある種の業界について、たとえば技術レポートなどがそうですが、報道のプロを大きく超えた感じがあります。

――それは、どういうことですか?

 10年ほど前までの状況を想像してみてください。その頃はまだ産業全体に対して出版物はほんの一握りしかありませんでした。それが今では、Blogを使ってお互いに情報交換をするようになりました。もちろん業界に詳しいプロのジャーナリストもいますが、その数は大幅に減りました。Blogがそのままジャーナリズムとなっているのです。大きな変化を与えたかと聞かれれば、全くそのとおり、と言えるでしょう。大きな事件が起こったとき、報道のプロが伝えることのすべてを信じる必要はありません。もし実際にその状況に関わっている人のBlogを見つけられたなら、私はそちらを読むようにしています。

 英国のニュース番組BBCでは、面白いことをしています。アマチュア写真家に写真を送るように呼びかけているのです。写真が送られてくる数は日に日に増えており、その潮流に乗っていこうとしています。たとえば、コロンビアで起きた大惨事の写真は、プロのジャーナリストが撮った写真ではなかったんですよ。

――プロのジャーナリスト達は、ニュースをわかりやすくするための価値ある情報や、状況、事実背景といった内容をもはや提供してはいないというのですか。

 典型的なニュースの構成は、インタビューで得られたコメントが大部分を占め、前後をうまくつなぎ合わせた上でそこに多少の事実内容を織り込ませたものになっています。もしレポーターなど間に人を挟まないで人々の発言を聞くことができたなら、と思います。ジャーナリズムは高尚な仕事とされていましたが、今となっては、ニュースに対する記者の意見を伝えているに過ぎません。これからはプロの人たちがBlogを使うようになり、さらにまたそこから広がって行くでしょう。

――Blogは教育においても同じように深く影響すると思いますか?また、それはHarvard大学から発信されると思いますか。

 そうですね。間違いないと思います。すでに、私たちのやろうとしていることを詳しく知りたいと言って、たくさんの教育機関から電子メールをいただいています。そしてその多くがBlogについてかなり知識を持っています。Harvard大は普通の大学とは違った、特別な意味をもった大学です。それは、とても影響力のある大学だということです。

Posted by sunouchi at 7:04 PM

March 5, 2003

偉大なGoogle が生み出す懸念

ZDNN 2003年3月4日 03:07 PM 更新

優れた検索技術で定評を得ているGoogle。しかし、ブロッグサイト買収や有料検索拡大など「検索と関係のない」事業拡大の動きが、一部でサイトの偏好やプライバシーに関する懸念を呼んでいる

 優れたWeb検索ツールで知られ、また愛されているGoogleだが、新たな分野へと進出するに伴い、その計画に疑問の目が向けられるようになってきている。

同社は最近、Webログ(ブロッグ)の草分けであるPyra Networksを買収(2月18日の記事参照)。その直後に、自社サイト上で行っている検索関連の広告リンクの販売を、パートナーのサイトにまで拡大する計画を発表した。

 これらの発表で、Googleは新たな領土へと乗り出していこうとしている。だがこの動きは、同社の新たな方向性への関心ばかりでなく、いくらかの懸念も招いている。

 「Googleはいつも『われわれは検索にだけ集中する』と言ってきたが、(Pyraの買収は)検索と何の関係があるのか? 関係ないではないか」と業界ニュースレターSearchEngineWatch.comの発行者、Danny Sullivan氏。

 Googleは常に新しい製品/サービスをテストしては手を加えているため、その計画に関しては絶えず憶測が飛び交っている。よく言われているのが、Googleが製品ラインアップを拡充して、Yahoo!など、検索ツールを中核にニュースクリップにWebベースメール、出会い系などのサービスを集めたWebポータルと直接競合するのではないかという説だ(2001年4月の記事参照)。

 GoogleはPyraの買収で、Yahoo!のGeoCitiesに似たWebパブリッシングツールを手に入れ、ポータルモデルにある程度近づくことになる。GeoCitiesは、会員の個人サイトをホスティングし、また個人サイト作成の手助けをしている。

 PyraのBlogger.comは、簡単にアップデートできる個人用のWebページ(ブロッグと呼ばれる)の立ち上げを支援している。ブロッグはインターネットの至る所で見られ、Pyraのブロッグツールはその中で最も人気の高い部類に入る。Pyraが1月に明らかにしたところによると、同社サービスの登録ユーザーは100万人に達したという。

 またGoogleはPyraの買収により、Webパブリッシングツールを手にするだけでなく、優れたデータ収集/分析技術の柔軟性をいっそう高め、リーチを拡大できるだろう。例えばGoogleは、Blogger.comユーザーがブロッグに載せたリンクを利用して、Web上に流れるニュースの情報をより早く集める方法を見つけだすかもしれない。これは、同社が少し前に立ち上げたニュースサービス(9月24日の記事参照)の強化につながるだろう。このサービスでは、ニュースサイトを巡回して最も重要なニュースを探しだし、独自の計算方法を使ってニュースの重要度を決定している。検索エンジンでは通常、こうした選別プロセスは人の手を介さずに行われる。

 ブロッグ世界では、多くの人々がGoogleのPyra買収を歓迎しているが、その影響に懸念を抱く人も多少いる。

 ほとんどのブロッグには、ほかのWebサイトやブロッグへのリンクが多数含まれている。ブロッグ作成支援ソフトを買収することで、Googleはその背後にある大量のデータを買うことになる。今のところ、同社が検索エンジンを介して見つけられるのは、ユーザーがオンラインに記した軌跡の最初の一歩だけだ。しかしブロッグに載せられたリンクをたどることにより、その軌跡を後々までたどっていけるようになる。つまりサイトAがどのようにサイトBにつながり、それがサイトC、D、Eにどう続いているかが分かる。

 そしてGoogleは初めて、コンテンツのランク付けと同時に、コンテンツのホスティングにもあたることになる。これが、利害の衝突を生む可能性がある。

 「サービスとインフラを同じ企業が所有すると、そこに危険が生じる。その片方を利用して、もう片方に利益をもたらすというのは魅惑的な考えだが、結局は生態系に悪影響を及ぼす」とInterconnectedブロッグの筆者、Matt Webb氏はメールでの取材に応えて語る。

 ブロッグトレンドと集合的知性(スマート・モブズ)理論に関する著書「Small Pieces Loosely Joined」「The Cluetrain Manifesto」をものしたDavid Weinberger氏も、GoogleがPyraの買収によって落とし穴にはまる可能性を指摘している。

 「Googleがそうなると考える理由はないが、普通の企業ならPyraを買収すれば、『自分の立場を利用して(Bloggerベースのサイトを)優先しよう』と真剣に考えたくなる誘惑に駆られるだろう」(同氏)。


プライバシー侵害の懸念

 Googleは、検索クエリーに対して高速で適合性の高い結果を提供しようと熱心に取り組んだことで、Webサーファー、パートナーのネット企業、同社の株式公開を待つ投資家から注目されるようになった。最近、AppleやCoca-Colaといった有名ブランドを抜いてブランド・オブ・ザ・イヤーを獲得した――自社サービスの広告を出したこともないのに――ことにも、Googleの強さが表れている(2月12日の記事参照)。

 しかし一部では、その名声の影の部分も徐々に見えてきている。

非営利調査団体Privacy Foundationのマネージングディレクター、Stephen Keating氏は、Googleに特有の懸念はさておき、同社は人々の情報へのアクセス方法が本質的な変化を遂げたことをありありと示していると語る。例えば、最近オンラインに掲載された法廷文書によると、Googleのような検索可能なデータベースで、個人の詳細な情報がさらけ出されることがあるという。

 「Googleは非常に強力な検索ツールだ。それ故、もはやインターネットプライバシーの意味を語るのも難しい。(Googleを使うと)セーターの毛糸をほどくように、個人の情報をすべて明らかにできる」(Keating氏)。

 同社がもっと意図的に危険をもたらす可能性があると懸念する向きもある。

 Googleは世界的に人気が高い。このため多くのWebサイト管理者が、自分たちが得ているインターネットトラフィックの大半は、Googleが編集した検索結果のおかげだとして、懸念を持つようになっている。こうした状況から、Googleの検索アルゴリズムに対して訴訟が持ち上がった(10月23日の記事参照)。

 また、Googleのデータ収集のやり方に対しても、一部からプライバシーの脅威になる可能性があるとの批判が向けられている。

 Googleはさらに、Blogger/パートナーサイトの検索に関係ないページ上でリンクを販売するという動きに乗り出し、24/7 Mediaやかつて広告を販売していたDoubleClickのような広告ネットワークに近づいている。これら企業は以前から、cookieのような追跡技術を使ってWebサーファーを監視し、彼らの関心に結び付いた広告を送ろうとしている。だがこうしたやり方には、厳しい監視の目が向けられている。

 ドットコム時代、最大の広告ネットワークだったDoubleClickは、ターゲット広告を提供する目的で、Webサーファーをどこまでも追跡することができるという理由で、かなり厳しい批判にさらされた。同社はオフラインのダイレクトマーケティング業者Abacusを買収し、Abacusの顧客の個人データと、それまでは身元を特定できない形で記録していた個人のWeb利用習慣のデータを1つに統合すると発表したことで、プライバシー侵害の恐れがあると激しい反発を受けた(2000年1月の記事参照)。同社はその後、規制当局とプライバシー擁護団体の批判を受けてこの計画を取り消した。そしてドットコムの破綻後、広告収入の減少から広告ネットワークを売却した。

 Googleのデータ収集能力に対しても、一部の人々が同様の警告を発している。中には、Webで最もプライバシーを侵害しているサイトを決定するコンテストにGoogleを推薦したサイトもある。

 Googleをこの「Big Brother」コンテストに推薦したのは、Google-watch.org。同サイトは、Googleは野放図にビジターのデータを収集していると主張する。

 こうした批判の多くは、Googleが「cookie」と呼ばれる一般的なWeb追跡技術を使って収集しているデータに関連している。多くのサイトはビジターのハードディスクにcookieを置いて、ビジターが再度そのサイトにアクセスした際に、どのサイトに飛んだのかをチェックしている。ほとんどのcookieは比較的短い期間で有効期限が切れるが、Googleのcookieは2038年まで機能するよう設定されており、ビジターのハードディスクに、ビジターが検索に使ったキーワードにリンクする一意のIDを埋め込んでいる。

 Googleはまた、ユーザーのブラウザの種類とIPアドレスも記録している。理論的には、この情報を使って、特定のコンピュータでWebをどう利用したかを追跡することが可能だ。ただしGoogleのプライバシーポリシーには、同社は個人を特定できない形でデータを収集していると記されている。

 「問題なのはGoogleの巨大さだ」とGoogle-watch.orgの設立者であるDaniel Brandt氏。同氏は、Googleの監視を支援するためにこのサイトを立ち上げたと語っている。「米連邦政府がテロの端緒を最も簡単につかむ方法としては、Googleと手を組んでバックドア追跡システムを仕掛け、検索を利用したユーザーの位置を特定し、ユーザーがどんな検索キーワードを使ったかを調べるというやり方が考えられる。そうすれば、テロ対策という名目で世界のマインドシェアを正確に把握できるだろう」。

 Googleにデータ収集に関する質問をメールで送ったが、個別の質問についての回答は拒否された。同社の返信には、同社のプライバシー慣行は、ユーザーの信頼に反するものではないと保証すると書かれていた。

 同社の企業開発担当副社長、David Drummond氏はこの返信で次のように述べている。「検索結果の品質を高める取り組みの一環として、ユーザーがどのように当社のサイトを利用しているのかを分析している。この情報を利用することで、当社は検索結果の品質を大きく向上させ、数百万の人々の情報検索を支援してきた。当社は個々人のユーザー情報をサードパーティと共有することはなく、またユーザー情報の保全とセキュリティに真剣に取り組んでいる」。

 Drummond氏はまた、ブラウザの設定を変えて、Googleのcookieを無効にすることもでき、cookieを無効にしても検索ツールに影響はないとしている。

 Drummond氏はPyraの買収について、Googleは引き続き「偏りのない客観的な検索結果を提供し、Googleユーザーに対してもBloggerユーザーに対しても最高レベルの誠実さと敬意を払う」ことに集中するとしている。

 今のところGoogleは、誠実という評判を損なうようなことはしていないが、その影響力が高まるにつれ、同社にはもっと耳目が集まることになるだろう。

 「Cluetrain Manifesto」の著者のWeinberger氏は、皮肉なことに、Googleに対して最近持ち上がっている懸念の多くは、同社がインターネットコミュニティで信頼を得ているが故に起きたものなのかもしれないとしている。

 「インターネットは文字通り、“プロトコル(決まり事)”だ。そしてそれに、お互いにどう接し合うかという社会的な決まり事がたくさん付いてくる。Googleはわれわれの目に見える範囲では、ほかのどの企業よりもこれらの決まり事を尊重している。しかし今、同社は図らずも、自らの成功により不信を招くという立場に立たされている。それは同社が強大で、皆に頼られているからだ」。

Posted by sunouchi at 8:46 PM

ソフト開発者、ハーバード大学に「ブロッグ活用法」を指南

ZDNN 2003年3月5日 02:41 PM 更新

ハーバード大学の“ブロッグ”プロジェクトのリーダー役にDave Winer氏が抜擢された。UserLand Softwareの創業者で、インターネット上で最も長く続いているWebログの1つを立ち上げたことで知られる同氏に“ブロッグ”ブームについて聞く

 アメリカ最古の大学がインターネットで最新のホットなトレンドに乗り、学生や教職員のWebログ(ブロッグとも呼ばれる日記形式のWebサイト)活用の指南役としてソフト開発者のDave Winer氏を起用した。

ハーバード大学はソフト会社の元役員である同氏を、ハーバード大学ロースクールに属すBerkman Center for the Internet and Societyのフェローとして迎え入れ、「Blogs at Harvard Initiative」という新たな取り組みのリーダーの役割を託した。テュレーン大学で数学を学び、ウィスコンシン大学でコンピュータサイエンスの修士号を取得したWiner氏は、Web上の公開日記で情報を発信するコツをハーバード大学の学生と教職員に伝授する。

 大学のエリートたちのブロッグ活用の案内役となるWiner氏は、コンテンツパブリッシングツール/サービスの専門企業UserLand Softwareを創業、最高経営責任者(CEO)を務めていた。同氏はSOAPやXML-RPC、RSS、OPMLなど関連する多数の仕様を作成、あるいはその策定に貢献した。インターネットで最も長く続いているWebログの1つ、Scripting Newsを立ち上げたことで最も知られているはずだ。

 同氏はブルックリン生まれで47歳。CNET News.comでは同氏に、ハーバード大学の既存のブロッグを組織化する取り組みの進行状況などについて話を聞いた。同氏はマサチューセッツ州ケンブリッジのオフィスでインタビューに応じた。

――最初に見たWebログを覚えていますか?

Winer 見るよりも先に作ってましたね。1996年2月のことです。私は当時Wiredの寄稿編集者で、通信品位法(CDA)に対抗して「24 Hours of Democracy Project」を実施したのですが、オンライン上でスポンサーや協力サービスがどんどん増えていきました。そこで、この動きを1つのWebページで新しいものから順に掲載するようにするべきだと考えました。そしてこう思ったのです、「これは便利だ。プロジェクトが終わったら、このことに取り組もう」とね。

 私たちはそれをWebログとは呼んでいませんでしたが、まさにそのものでした。その後間もなく、私はUserLandのスクリプト環境である「Frontier」に関するWebログをスタートさせました。当時私はUserLand SoftwareのCEOだったんです。それから1年後の1997年4月に、私は自分のWebログとしてScripting Newsを立ち上げました。これは現時点でインターネットで最も息の長いWebログでしょう。というか、その1つですね。インターネットでは、最上級の形容詞は、後で事実ではなかったということになりがちですから。

――どうしてブロッグと呼ばれるようになったのですか? また、このメディアあるいは形式はどのように発展してきたのですか?

Winer Webログは年々成長しています。Robot WisdomというWebログを公開しているJorn Barger氏がブロッグという言葉を考え出しました。ブロッグは今や大勢の人が作成していますし、以前よりずっと作成しやすくなっています。ブロッグを扱いやすくする取り組みを私たちが進めてきたことと、人々がインターネットを使いこなすようになってきたことが背景にあります。ブロッグの作成は最終的には、電子メールやワープロ操作のように基本的なスキルになるでしょう。普通に文章を書く感覚でブロッグを作るようになるわけです。私が大学で仕事をするようになった理由もそこにあります。私たちは学生や教授にブロッグの作り方を教えますし、彼らは彼らの学生に教えることになります。つまり、私たちは長い道のりを進む準備をしているわけです。

――ハーバード大学ロースクールとの関係はどんなふうに始まったのですか?

Winer トントン拍子に話が進みました。私は長年ビジネスとしてソフト開発に携わってきましたが、ほかのことをしようと考えていました。一方、ハーバードの人たちは、学内のさまざまな組織間で情報を共有できるようにすることに非常に関心を持っていました。彼らは昨年末に開いた会議で、ハーバード大学のデジタルID管理のあり方を確立しようと討議を行い、アイデアが生まれてきたのです。ハーバードは分権化が進んだ巨大な大学で、小さな中核組織と共にビジネススクールや行政学、図書館学など多数の学部や大学院で構成されています。多数の部門を持つ企業のようなものです。どうすればそうした部門間で力を合わせ、情報を共有して仕事の重複を排除することができるか――。私たちがビジネスの世界で頭を悩ませていることがここでも課題となっているわけです。

 その解決策としてWebログが有力な候補として浮上したため、大勢の人がハーバード大学に「Daveと話してみるといい」とアドバイスしました。そして、私はたまたまクリスマスで東海岸に来ていたので、ハーバードを訪ねました。すると彼らは私をフェローとして招いてくれたのです。

――ハーバードにまだブロッグが普及していないというのはとても意外です。

Winer 学内全体でも公開中のWebログは10くらいでしょう。率直に言ってまだ産声を上げたばかりです。今後は学内のあらゆる面に関するWebログが立ち上がるでしょう。私の任務は大学全体がカバーされるように持っていくことです。Webログに取り組む義務は誰にもありませんが、希望する人は誰でも取り組んでいいことになっています。真に有意義なWebログが100サイトも生まれれば、私は非常にうれしく思いますし、ほかの人も皆とても喜ぶでしょう。

――ハーバードでのあなたの具体的な役割はどのようなものですか?

Winer 布教者、教育者、研究者です。教えるのと同じくらい学びたいと考えています。何年もずっとソフト作りを手がけてきましたが、ユーザーと接した時間はそれほどありません。取り組んできた問題は主に技術的なもので、「これこれのことをどうやって処理するか」「何を基本機能にするか」「これらをどう結びつけるか」といった具合でした。今度は反対の立場に立って、ユーザーコミュニティのソフトに対する反応を見ていくつもりです。そして「どうすればより良いソフトになるのか」「ソフトの活用の障害は何か」などを学び、学んだことを広く分かち合おうと考えています。学んだことを発信して、誰もが知ることができるようにしていきます。

――あなたはかねてから、Webサービスに欠けているのは企業向けではなく個人向けのアプリケーションだと話していますが。

Winer Webサービスの企業向けアプリケーションが有効なのは分かりきったことです。お金や購入注文をやり取りする手段としてインターネットを使うことには何の問題もありません。でも、インターネットで行われることはそれだけではないし、それは最も興味深いアプリケーションでもありません。私はWebサービスを、サーバアプリケーションとWebログの作成ツールを連携させる手段ととらえています。現在、SOAPやXML-RPC、RSS、OPMLを応用した技術開発の取り組みが多数進んでいます。優れたWebログ作成ツールと、複数のソースからWebログを集めて読めるようにする仕組みが開発されているのです。

――ブロッグは情報共有のあり方にどんな影響を与えていますか? 特にジャーナリズムとの関連ではどうでしょう?

Winer IT報道など一部の分野では、Webログがプロの仕事に取って代わる動きが大きく進んでいます。

――え、何ですって?

Winer News.comは例外でしょうがね。5年、あるいは10年前の状況を考えてみてください。メディア業界にITをカバーする1つの大きなセクターがあったわけではなく、もともとこの分野には一握りの媒体しかありませんでした。今、人々はWebログを使って、お互いのためにお互いに情報を提供し合っています。プロのジャーナリストは今も記事を書いていますが、その数はずっと減っています。Webログはジャーナリズムなのです。大きなインパクトを与えているか? もちろんです。大きな出来事が起きたとき、私はプロのジャーナリストの記事を必ずしも頼りにしません。その出来事に実際にかかわっていた人たちのWebログを読むことができれば、それを参考にします。

 BBCは非常に注目すべき動きを見せています。アマチュアの写真家に写真の提供を募ったのです。つまり、彼らは今後拡大の一途をたどる流れに飛び込んでいるわけです。コロンビアで大地震が起きたとき、彼らはどんなルートで写真を入手したと思いますか? プロのジャーナリストからではありませんでした。

――つまり、プロのジャーナリストはニュースの理解に役立つ価値ある情報、文脈や背景を何も伝えていないというわけですか?

Winer 典型的なニュース記事は、取材で得たコメント、多少のつなぎの文章、いくらかの事実、等々といったもので構成されています。大部分は人々のコメントです。仲介者を通さずにコメントが得られるとしたら、CNNが報道の世界にもたらしたことさえも、一体何だったのかと問い直さざるを得ません。彼らは自分たちの給料を少しばかり稼いだかもしれませんが、Webログは既にジャーナリズムへと成長していますし、その内容ははるかに充実しています。ジャーナリズムは大切な仕事ですが、せんじ詰めれば出来事に対する見方を提供することにほかなりません。プロはこの技術をどんどん使うようになると思います。

――ブロッグは教育にも同様の深い影響を与えると思いますか? そうした流れがハーバードから広がっていくのでしょうか?

Winer まったくそのとおりです。私たちの取り組みについて知りたがっている膨大な教育機関から電子メールが届いています。多くはWebログの活用で大きく先行しているところです。ハーバードの試みが特別に重要なのは、ここが普通の大学ではなく、非常に大きな影響力を持っているためです。

Posted by sunouchi at 8:43 PM

February 17, 2003

ルータの“利己主義”でネットワーク速度が低下

ZDNN:ニュース速報 2003年2月15日 10:05 AM 更新

コンピュータネットワークはそれぞれが高速回線を利用してトラフィックを振り分けようとすると「自己中心的」になる傾向があり、回線を混雑させて速度を落としてしまう――。コーネル大学のコンピュータ科学者がこんな研究結果を発表し、インターネット高速化のためには他者を尊重することが大切だと結論付けている。

この研究は同大学のEva Tardos、Tim Roughgarden両氏が2月14日、デンバーで開催されたAmerican Association for the Advancement of Scienceの年次会合で発表した。

 研究によると、データのパケットを振り分けるルータが他者を尊重するようプログラムすれば、情報が目標に到達する速度は若干速くなり、他のパケットの動きも迅速化するという。

 データのパケットが目標に到達するには多数の方法があり、その方向指示はルタに依存している。現在のルータが情報送信先を決めるやり方には複数あり、テストパケットを送信して時間を計る場合もあれば、近くにあるネットワークの状況について情報を交換する場合もある。ルータが最も混雑の少ない経路を選んだ結果、ここでも混雑を引き起こしてしまうことも少なからず起こる。そうした場合、ルータはそれまで回避していた経路を選択する。

 この結果、システムはNashフローと呼ばれる平衡状態へと流れ、通常、理想的なシステムよりも低速となる。Tardos氏らは、ルータがパケットを送信する方法の数学的な分析を実施し、伝送速度は理想的なシステムに比べて最大1.33倍向上することが判明した。

Posted by sunouchi at 1:54 AM

February 12, 2003

地球はインターネットによって救われる?

ZDNN:アンカーデスク 2003年2月10日 07:16 PM 更新

ネットによる通信革命が生んだ「ナノニッチ化」はいずれ、グリーン革命やハイパー産業革命へとつながっていくだろう

2年前に始まった景気後退は、忌まわしい9.11同時多発テロによってさらに悪化し、その影響は世界経済に及んでいる。しかし不思議なことに、不況にはつきもののとんでもない失業率、貧困、そして世のはかなさを嘆くポップバンドの登場が見られない。

 これは、通信革命が引き金ともなった目に付かない強い底流が――米国だけでなく――世界経済を支えているからだと私は考えている。

 以前の景気後退と今日の世界経済の状況との違いを示す主な要因をいくつか挙げてみよう。

 ハイパーコミュニケーションによって、極小のニッチ市場が急増した。

 携帯電話がユビキタス化し、個人経営の小規模企業にも、多くの秘書やサポートスタッフを抱える大企業並みに連絡が取りやすくなった。中古のソファ、自動車、コンピュータなどを売ろうとする人たちに、10年前ならその道のプロしかできなかった手法でコンタクトが取れる。

 これらはすべてインターネットのおかげだ。インターネットは、地理的に離れた場所にいる似た考えを持つ少数の個人を結び、極めて小さなニッチ市場として機能させることができる。インターネット以前の時代でも可能ではあったが(通信の遅延や手間という点で)高くついた。インターネットの登場で通信コストが格段に安くなり、価値のあまりない、極めて限定的な需要しか見込めない物品を少量取引する「ナノニッチ」が急拡大した(個人取引そのものは10年以上前から行われていたが)。

 そしていくつかの大きな技術革新がインターネットサービスに発展した。

 Googleなどの検索エンジンは、インターネット上の物品検索に革命をもたらした。7000台以上のLinuxサーバと自社開発した革新的なソフトの利用で、競合の検索エンジンで大きなボトルネックとなっていた検索スピードと検索ページ数の問題を克服した。当然のことながら、ナノニッチは有用な検索エンジン(または情報ディレクトリ)なしには機能し得なかった。

 しかしながら、XMLを利用してより多くの情報をWebコンテンツに注入し、それらをTopic Mapsなどを使って検索するという動きはまだほとんど実現されていない。知的検索への移行はいずれ必ず起きる発展の一歩ではあるが、現在は現行世代の検索エンジンが十分すぎるほどの機能を提供している。

 eBayなどのオークションサイトは、誰でも自分が持っている物(主に中古品)を販売できるグローバル市場を創出した。それまではゴミとして捨てるしかなかった、百万人に1人程度の関心しか引かないような低価値物品の売買が可能になった。売りに出す商品は、デジタルカメラで写した写真で簡単に紹介できるし、支払いは電子的に処理できる。そして何よりも、競売システムによって個人が商品を適切な価格で販売できるようになった。

 現在、多くの人がeBayを介した商品の売買で生計を立てており、スモールビジネスとして経営しているケースもある。インターネットがなければ、通信コストが高くつくこのビジネスモデルは成り立たなかった。

 ebuyer.comやAmazon.comをはじめとする電子小売業者は、私自身も個人的によく利用する優れたオンラインショップの例だ。実店舗で必要な販売部隊や店舗が不要なためコストが大幅に抑えられる。電子小売業は、必ずしもすべての商品に通用するとは限らないが、特にブランドがものをいう日用品、もしくは人に勧められて購入するタイプの日用品には効果がある。企業の株や石油、オレンジジュースといった日用品は、何百年も前から、購入者が念入りに調べなくても買っていたものであることを思い出そう。中でもAmazonは、節約したい人が中古品も手に入れられるという点で興味深い。


グリーン革命

 さて、「通信コストがなくなったおかげで、かつては捨てられるだけの運命にあった品々がどんどん取引されるようになっている」という点はご理解いただけたことと思う。これはもちろん、「中古品が新しい製品と競合している」という意味でもあり、メーカーはプレッシャーを感じていることだろう。そこで、この影響を受けている3つの例を以下に示す。

 音楽と映画:昔の曲にアクセスしやすくなった。中古品や在庫一掃品を低価格で取引できる。かつて流通によって消費者の手に届く商品をコントロールしていた業界の権力は、実際、完全に崩壊した。音楽バンドは自分たちの楽曲をしばしばネット上で直販し、アルバムの中の曲を無償提供することもある。これらはすべて、古くから音楽市場に君臨する従来型企業の脅威となるものだ。デスクトップビデオパブリッシングは今や当たり前で、ホームPCが架空のジャンボ機や自動車をレンダリングできるほどパワフルになったという事実は、米映画業界にとって決して良い兆候とは言えない。かつて編集作業には高いコストがかかったがこの障壁も取り除かれた。Cakewalk、FruityLoopsといったソフトで音楽作りがずいぶんと簡単になった。オーケストラを使った楽曲から、スクラッチやサンプリングを使った最新のハードコアミュージックに至るあらゆる音楽を作ることができる。しかもこれらはすべて、ミュージシャンを雇わくて済むばかりか、楽器の演奏を習わなくてもできてしまう。作曲者にはもはや、ミュージシャンは必要なくなっている。

 ソフトウェア:インターネット上で可能なハイパーコミュニケーションによって、世界中に散らばっている少数派が共同で、大規模なソフトウェア開発プロジェクトを手がけることがきるようになった。良く知られる例が、今日標準とされるMicrosoft Windowsに対抗するLinux OSだ。無償の知的資産であるLinuxは、今や腕時計からメインフレームに至るさまざまな製品で採用されている。これに加え、多くの他の無償ソフト(私が個人的に気に入っているのは、優れたプロジェクト管理ツールのMrProject、Microsoft Officeの対抗製品であるOpenOffice、Microsoft Visioと競合するDia、Outlookと競合するEvolutionなどだ)が従来のビジネスモデルを採用する企業に圧力をかけている。実際、Microsoftはデスクトップソフトの売上が将来減少すると予想している。ただここで覚えておくべきは、機能しなくなっているのは「伝統的なビジネスモデルだけ」という点だ。(Red Hatなどが進める)新しいビジネスモデルは、オープンソースソフトを、実証済みの統合型モデルに組み入れようというものだ。

 このビジネスモデルでは、アップグレードの売上が重要となりつつある。この分野では、ソフトの開発についてのビジネスモデルを探すのは難しい。おそらく現在、まだ存在しないのかもしれない。いずれ、何としても特定機能が欲しい企業や組織が、報奨金を出してその開発を希望するプログラマーたちを競わせるという報償システムが確立するのではないだろうか。インターネットからソフト開発の自由が開けたことで、人々がそのソフトを旧型ハードウェアに対応させるという2次的な効果が期待できる。これはリサイクルの点で有効だ。私の知る最新の数字では、1年間に埋め立て地に葬られるPCの台数は英国では100万台、米国に至っては実に1500万台に上っているという。旧来ハードへのソフトの対応促進で、こうした大量の廃棄物が減少へと向かってほしいものだ。

 自動車:一部には過剰生産、そして最近の技術進歩によって、高性能の自動車が驚くほど安く手に入るようになった。つまり自動車メーカーは自動車の買い替えサイクルがより長くなることを覚悟しなければならない。これはあらゆる製造業に横断的に言えることでもある。自動車メーカーは本質的に古いモデルと競争している。近いうちに、自由参加のカーデザインプロジェクトが誕生し、従来の自動車メーカーと競い合うことになるかもしれない(「OSCar Free Car Design」で検索してみるといい)。地球上のどんな小さな会社でも、自動車の新しい排気機構の開発の競争に参加できるような、素晴らしい世界がやってくるかもしれない。

 インターネットが生み出す注目すべき2次効果は、世界中の企業が抱える余分な富が小規模な会社に流れていくことだ。サッチャー元英首相はかつて繰り返し「小規模企業こそ経済の動力源」と言っていた。私の性には合わないが、今ではサッチャー女史の経済論の多くに同意している。おそらく今後、大きな会社が多くの種類のカスタマイズ製品を、それぞれ少量ずつ生産する「ハイパー産業革命」が現実のものとなるだろう。私が知る、これに最も近いビジネスの例は、カバーが変えられるNokiaの携帯電話だ。たぶんここでボトルネックになるのは大企業の研究開発部門だろう。だがおそらくIBMは、ナノニッチ化旋風にうまく乗ることができるだろう。同社は一枚岩的な企業構造から脱して、ある意味、自社の中にミニNasdaqを築こうとしているようだ。これとは対照的に、Microsoftのような一枚岩的な会社は今後それほど成長できないだろう。もっとも彼らも、IBMをイメージしながら会社の再構築にあたるだろうとは思うが。

 私の出した結論は、「古いコンシューマー製品が埋め立て用地に葬られることがなくなる上、個人のニーズに応じた製品が入手できるようになることから、将来は地球に、より豊かな緑が蘇る」ということだ。この結果、メーカーは新製品を投入しづらくなる(「これもいいが、やっぱり古いものが好きなんだ」という人が増えるだろう)。多面的将来の実現には新しいビジネスモデルが必要であり、Fordが採用した有名な生産ラインは古代遺跡のような過去の存在になるかもしれない。だがインターネットによって、本当に地球は救われるかもしれない。

※本稿筆者Jeff Daviesは1989年に電子工学の修士号を取得。英国政府出資のサイトで科学実験を自動化するプログラムの開発 (リアルタイムのグラフタイプのプログラム、Microsoft C、VB、QuickBasic)を手がける。Lotus認定デベロッパーとして7年間Lotus Notes (Lotusスクリプト、Microsoft Visual C++、SGML)でCRMシステム、インターネットコンテンツ管理、文書管理、その他の業務自動化ソフトを開発。現在は、子供との時間を大切にするため、主にソフト開発とは関係のない9-5時の職務に就いている。あいた時間で複数のプロジェクトを扱うHipparchus Systems Ltd.という会社を経営、この会社でいずれ一旗揚げたい考え。

Posted by sunouchi at 9:08 PM