Taglang La 峠を越えるとバスはどんどんと高度を下げ、あたりの景色に僅かな緑の気配が戻ってくる。山間のちょっとした平地にある村を通り過ぎるところで、突然にバスのタイヤがパンクして、2時間ほど立ち往生する。
麦の収穫はすっかり終わっていて、もう今年の役目は終えたといわんばかりの静かな畑が、僅かな山間の平地いっぱいに広がっている。すぐそばから切り立つ崖は、まるで十二単の襲(かさね)の色目のように、緑や蘇芳の、幾色もの地層がほぼ垂直斜めに露出していて、グラデーションをなしている。まだ9月だというのに、冬はすぐにもやってきそうだ。