(マシュハドが誇るエマーム・レザー廟。金の玉ねぎの下にマシュハドのグラウンドゼロともいえるエマーム・レザーの墓がある)
マシュハド滞在もあっという間に5日目。これまで自分が見てきた国々とは全く異なるイランという異質な世界に圧倒され、その空気に馴染もうとしているだけで毎日が過ぎていくような気がします。素子の、全身真っ黒で顔だけ出すチャドラ姿もすっかり見慣れましたが、その姿のまま、ネットカフェで普通にパカパカとキーボードを叩く姿をふと見ると、非常に不自然な感じがして笑えたりはします。
(通りでバスを待つ女性たち。バスも男と女で乗車口が違って、中には仕切りがある)
(マシュハドに着いた翌日にチャドルを選ぶ。女性が衣服を見るとすれば、このチャドルか頭に巻く布ぐらいのイメージ……)
イランに着いてからタクシーの運転手たちとはいろいろとありましたが、その他の面ではイラン人はとても好印象。みな穏やかな笑顔ですぐに助けの手を差し伸べてくれることが多く、イスラム教徒は、テロなどのイメージとは裏腹に本当は穏やかな人々だ、というのがとても納得いきます。
(男性は基本的にラフなアジアンルックですが、このようなターバン姿の人もちらほら)
さて、このマシュハドは、イランの中でも名高い聖地。
にわか勉強なのに知った顔で書くは恐縮ですが、イスラム教は大きくスンニ派とシーア派に分かれ(マホメットの死後、後継者を誰とするかで分かれた)、世界の圧倒的多数はスンニ派。でもイラン、イラクではシーア派が多数派で、確かイランはシーア派のイスラム教が国教となっている唯一の国。ちなみにイラクもシーア派が多数を占めるものの、フセイン元大統領がスンニ派だったため、スンニ派の力が強かった。しかしフセイン政権が転覆した後その力関係が変わり、スンニ派、シーア派の間の対立が激化していまにいたるとのことです。
(とにかく最初はどこを歩いても、女性の姿に圧倒されましたが、数日経つと実に自然に見えてきました)
さて、マシュハドはそのシーア派にとっての重要な聖地。前回書いた通り、エマーム・レザーという超ビッグネイム(なんて呼び方で誤魔化させていただきます)が殺された地として、エマームレザー廟があり、その廟に巡礼に来ることがシーア派の信徒にとっては非常に重要なことなのです。
(正面の入り口からみたエマーム・レザー廟。この中の広大な敷地がエマーム・レザーに捧げられている)
廟はイスラム教徒以外でも見学可能で、ぼくらがマシュハドに来たのももちろんこのエマーム・レザー廟を見るためです。ここにくればイスラム教の圧倒的な迫力に驚愕するという前評判どおり、この旅で久々(多分カイラス以来)の大興奮を味わいました。
エマーム・レザー廟は、広大な敷地を占めていて、その入り口でボディチェックを受けてから(女性は全身を隠すチャドル着用が義務)中へ。門をくぐると広大な広場が広がっていて、その周り・前方をモスクやメドレサ(イスラム教の学校)などの建築物が取り囲んでいます。それぞれ建築物は、見事な繊細さと色彩を誇る幾何学模様で装飾されていて、イスラム芸術の美しさを改めて実感。その外、中を問わず、広い敷地に赤と黒を基調とした絨毯が引かれ、その上に人がメッカの方向を向いて座り、コーランを広げ、それぞれ祈りをあげているのです。中央アジアで見た、すでに遺跡となり観光地となり、本来の役割を終え生命を失ってしまった建築物に比べ、やはり迫力が違います。
(中の大きな講堂で祈る女性たち)
(中央の墓のそばに近づくにつれ、中の装飾もこのようにきらびやかに。そして至るところで人々が祈っている。このあたりから男女の入れる場所が分かれる)
そして、このエマーム・レザー廟の真骨頂は、その中央部分にあります。中央の場所は、昔エマーム・レザーが埋葬された場所とされ、そこを取り囲む大きな建物の中に入ると、まずその輝きぶりに圧倒されてしまいます。大きなシャンデリアがあるそれぞれの部屋の壁と天井がミラーのようになっていて、そのミラーに規則的で細かな凹凸があるために、光があらゆる方向に反射し、まるで晴れた日の広大な海面のようにキラキラと光っているのです。まさにイスラム教の輝かしさを称えるかのようなその圧倒的な光の交錯の中で、もちろん、信徒たちが座り、立ち、そして祈りをあげていました。そして、その奥のまさにエマームレザーが埋葬された場所の部屋の中で、その熱気が最高潮に達するのです。
緑の光とこれまたギンギラの天井を誇るまぶしいほどの部屋の中心には、巨大な銀色の壮麗な箱(墓?)が置いてあり、それに向かって我も我もという様子で人がたかり、なんとかその銀色の物体に触れ、しがみつこうとしているのです。そして、その箱に触れた手で自分の顔を撫で、また自分の持ち物もその箱(やはり「箱」じゃしっくりこないけど)にこすり付ける。感極まって涙をこぼしている人もいます。将棋倒しになったら100人単位の死者が出そうなその人だかりの中で、誰かが何かを叫ぶと、それに呼応するようにみながまた同時に「おおー!なんとかなんとか~」と雄たけびを上げる。そして、次々と押し出されるようにその部屋を出て行きながらもみなが、その箱を見つめ、手を胸に当てています。みな、どれだけの思いを抱いてこの場所に来ているのかということは、イスラム教徒以外には分かりそうにないように思えました。
一度にその付近にいる人はおそらく1万人は下らないのではないかと思われるほどでした……。
その様子にぼくらは完全に圧倒され、そのとき、わずかながらイスラム教の芯の部分に触れられたような気がしました。まさに聖地が持っている甚大なエネルギーが惜しみなくあふれ出しているような光景でした。
(もともと写真は敷地内すべてダメかと思ってたけど、実はその中央の墓の部屋以外はほぼ問題ない様子であることが判明し、3回目に行った今日の夜、いろいろと撮ってみました。でも、一眼レフはさすがに持っていけず、コンパクトカメラで微妙に遠慮しながら)
……と、ここまでその圧倒的な様子を書こうと試みましたが、3日続けて見学にいくと、さすがにその驚愕の風景にもだんだん慣れてきて、今日は多少「あれ、こんなもんだっけ?」って気分になってしまいました。寒さもそうですが、人間よくも悪くも、ナンにでも慣れてしまうものだなあと実感。今日ももちろん、熱気むんむんの中央の部屋に入りましたが、熱い巡礼者の中には、隠れて必死に写真を撮ろうとがんばる人たちの姿も。この中は写真撮影禁止ですが、二人の少年は隠れて写真を撮り、係員にはたきで叩かれつつも、それをひょいとかわし、「そんなんではくじけねーぞ!」とばかり、さらに撮影を続けたりと、なかなかのお茶目ぶりを発揮していました。度々通っているうちにそういう風景が徐々に目に付きだすようになり、熱狂的な一方、案外フランクで軽いノリの部分もあるのだなあ、となんかちょっとほっとしたり。
いずれにしてもマシュハド滞在でイスラム教がぐっと身近になったことは間違いありません。
さて、明日(29日)はテヘランと思っていましたが、その途中で田舎の村にいけるかもという情報を得て、電車を途中下車することに。マシュハドから2時間ほどの小さな町に明朝出発します。そこからがんばってなんとか小さな村まで行き、どこか泊めてもらえる家を探す予定ですが、全く言葉も分からない状態でそんなことがうまくいくのかどうか……。場所は前回の地図のマシュハドからテヘランまでの道のりを6分の1ぐらい進んだあたりです。名前はよく分からないのですが……。いずれにしてもあと3、4日後にはテヘランにいる予定です。
ちなみにいま日本との時差はすでに5時間半。さすがにだいぶ西に来たなあと感じます。
全然知らないイスラムの世界に
圧倒されています。
すごいなぁ・・・。
チャドルでネットカフェ、
の素子さんを想像して
あたしもにやにやしています。
ふふふ。
イスラム教の建物ってきらびやかですね~。それに、独特な雰囲気。
チャドルって見た目には動きにくそうなんだけど、どうなのかな?
久しぶりです。
ひさびさにブログ見させてもらって楽しませてもらいました。
写真めっちゃきれいですね!
今日有吉さんにあいました。
近藤さんの話で盛り上がったんでカキコしてみました!
元気そうでなによりです。
お久しぶり。あけましておめでとうw
アンダルシアでイスラムの文化に触れ、マラケシュにも行ってみたけど、イスラム美術は、繊細で、美しく圧倒されるものがあるよね。でも、写真を通してみる限り、俺が見たものより、素晴らしい。本物なんだなーって感じがする。
ところでヨーロッパにはいつ頃に?
Posted by: Nori-zo in LDN at January 31, 2008 10:11 AM>Chieちゃん
イスラム世界は、マレーシアやインドネシアでも見てきたけど、やっぱり中東の方がぐっとそれっぽいのかなあと感じてます。特に女性は、服装以外にも、バスの座席が男性と分けられてたりするので、なかなか大変そうだけど……。
>Rika2さん
イランに売ってるチャドルはイラン式とアラブ式の2種類あって、イラン式はただの大きな布を頭からかぶって体に巻きつけるタイプ。アラブ式は腕を通せる袖がついていて、前もチャックとか紐で留められるようになってるタイプ。イラン式はただ布なので、常に自分の手で布を押さえて前が風でたなびかないようにしないとだめなので、結構面倒かも。初心者はアラブ式がいいよって薦められたので、私はアラブ式を買いました。アラブ式だと超薄手のコートを着ている感じで体の動きには全く影響ないよ。
>大原さん
おお~、久しぶり!元気そうで何よりです。有吉さん、上海にいらしてたんだね。おれも北九州飲み(?)参加したいなあ~。最近食事が単調だから、ちょー中華に飢えてます。上海いたころは、中華なんて……って思ってたけど、いまは中華さまさまだよ(笑)。まだ上海にはしばらくいるのかな?中国、大寒波らしいけど、体に気をつけて!
>Nori-zoさん
こないだちょうど、Nori-zoブログの該当箇所を見てたところだったよ。マラケシュもきれいそうだなあ~。しかしすごいいろんなところに行ってるよね!中央アジアではイスラム世界といっても、どこもなんとなく観光地っぽくてディープさにかけてちょっとがっかりだったので、イランに来て、俄然、おお、これぞ!って感じで楽しんでます。とはいえ、今回はイランは短くなりそうだけど。これからスピードをあげて、ヨーロッパには4月には着く予定!まだどこの国にいくかは未定なんだけど、近づいたら連絡するね!
Posted by: ゆうき・もとこ at February 1, 2008 9:13 PMお久しぶりです、お元気そうで何よりです!
上海から一時帰国で大阪です。大雪になる前になんとかたどり着きました。
イスラム圏憧れです・・・・。
モスク、とっても美しいですね。
そうそうひそかに民族衣装が好きな私は(それもあって雲南に行った)チャドルも超興味シンシンです、素子さん似合うやろなぁ~。
みんなあの包まれた布の中でおめかししているんですよね。
魅力的☆
どうぞお気をつけて、
またレポート楽しみに読ませていただきますねぇ~。
>あらたさん
どうも、ご無沙汰してます!
いま、大阪ですか!最近たまに日本の生活がちょっと恋しくなったりしてます。これまで東南アジアとか中央アジアとかのイスラム圏には行っていたけど、イランにきて、やっぱり中東は違うなあ~って感じてます。やはり女性のチャドルのせいかな?イランにくれば、チャドル着る機会は満載なので、是非今度!
日本も中国も寒いようですが、体に気をつけて!