(アリへ向う途中、後半はずっとこんな)
昨日の夜9時半に無事アリに到着しました。ランクルで行った方がバスより早いはずだったのですが、途中長時間の休憩が入ったりした結果、計31時間。かなりハードな移動でした。モンゴルでの24時間の移動に比べれば、ランクルだし今回の方がマシなはず、と思っていたのですが、大間違いでした。
さてその行程。以下、時間はすべて新疆時間(オフィシャルには中国全土北京時間を使うのですが、さすがに新疆まで来ると事実上の時差がかなり大きいため、現地の人は北京時間から2時間引いた新疆時間を使ってます)。
(出発地点の零公里。この奥に見える建物の中に無線ランが!)
31日昼12時にチェックアウトしてすぐ出発、のはずが、同乗する運転手の親戚やら友人を拾い、さらにメシを食ったり、その他わけの分からないロスタイムがいっぱいで、零公里を出たのは2時。さあ出発。でも、1時間ほど行った先の村で3人の親子を乗せるためにまた停車。さらに何を思ったか運転手がここで、車にVCDを入れるからちょっと待ってくれといって、なんやら複雑そうな分解開始!そしてやっとできたと思ったら、映った画面は反転していて音がでない。なんでだなんでだと、みなでゴソゴソやって、出発できたのは1時間半後!すでに4時半。車内は8人(+赤ちゃん)になり、結構ギュウギュウ。みなウイグル人なので、会話は全く分からず。そのうち何人かは片言の中国語可。運転手はその後もVCDのことが気になってしょうがないらしく、運転に集中できず。
(このランクル。いまVCD交換中)
途中すぐに3000~4000mほどになっていたはずで、多少頭痛がしたり、眠気に襲われたりするものの、大したことなし。しかし、後ろに座っていた親子3人の母親(Aさん)が、途中で激しく嘔吐。しかも、その10分後ぐらいにはその隣の旦那がもらいゲロ。すごい音に思わず後ろを振り返ると、黒いビニール袋に並々と液体が……。その後も、もらいゲロ、連鎖ゲロ大会は盛況で、先のAさんと話していた女性Bさんが二人でゲロ。で、さすがに二人とも意気消沈したものの、その後回復し、饒舌なBさんがAさんになにやら熱弁を振るっていると、聞き上手っぽかったAさんもさすがに耐え切れず三度目の小ゲロ。それなのに話をやめないBさんがすごい。
と、変な話になりましたが、4000mぐらいになると車内はそんな感じ。しかしぼくら二人は、眠気や寒さ以外は特に問題なし。高山病対策に、水をいっぱいのみ、たくさんトイレに行き、そして深呼吸を続けました。効果あったのかな?
夜9時、零公里から235キロ先の道班マザルで夕食(「道班」は通り沿いのちょっとした休憩場所。大抵、食堂、商店、宿あり)。そこで食べた麺類はあったかくてなかなかおいしかったです。
(晩飯風景)
ここで2時間ほど停まって(その間にぼくはなぜか小便3回!水を飲みまくって新陳代謝を上げる作戦に成功していたようなのですが、ちょっと頻繁すぎ)、11時に再度出発。ここまで9時間で235キロというペースはいかがなものかという気が……。ほんとに30時間で着くのかも怪しくなってきました。
外は真っ暗闇。光は車のライトのみ。が、途中でまたトイレに降りて見た光景にびっくり!降りて顔を上げると、巨大な雪山の頂上が目の前にありました。有名はK2など7000、8000m級の山がその辺にはいくつもあるようだったので、その中の一つだったのかもしれません。満天の星の中に見えた白と黒のその鋭い頂上は、玄関を開けたらあらそこに、というぐらいの距離感で迫り、ほんとに神秘的で恐ろしい風で、唖然としてしまいました。正直、震え上がるほどの景色で、それを見ただけでもここまで来た甲斐があったという気がしました。
さて、車内はみな疲労感たっぷりで、運転手もさすがに疲労を隠せず。と思ったところ、ドライバー交代。ぼくの隣に座っていた運転手の親戚の男が運転席へ。ドライバーは休憩。そうか、交代で運転するのか、とちょっと安心した矢先、10分ぐらいですぐに新ドライバーが居眠り運転を始め、真っ暗闇の中、目の前に小さな橋が見えたところで危うく横転!車内は悲鳴、しかし、なんとか無事停車。さすがにヒヤリとしました。そして新ドライバーは、一発レッドカード。またもとのドライバーへ。
この疲労感のまま運転を続けるのはありえないだろう、と心配しながら思っていると、深夜1時に後ろの親子3人の家に到着。約360キロ地点。そこでぼくらも休ませてもらうことになり、「2時間だけ寝よう」という話になり、みなでベッドへ。布団は、毛沢東時代から洗ってないのではないかというほどの代物で、触っただけで手がしっとりべっとりするようなものだったけれど(モトコジャッジの段階ではない)、あまりの疲労に、寝てしまえば結構快適で、みなぐっすり。2時間で起きられるわけもなく、起きたのは6時間後!7時に出発。もう完全に朝。ここまで17時間で360キロ。あと750キロ近くあるのに、このペースはまずいと思いました。でも、みなすっきりして溌剌とした出発。
(泊まった場所からの朝出発前。後ろに雪山)
朝になると、東に向うぼくらにとって早朝の日差しが凄まじく強烈で、印象的でした。太陽が沈めば凍えるし、あればあったでまた厳しい。自然の力の果てしなさを実感(って、車内にいるんですけどね)。
この辺からは雪山に囲まれただだっ広い荒野が増えてきて、ぐっとペースアップ。そして絶景が始まります。
(途中で停車するとこんな感じ。こんなとこにも住んでいる人がいて、しかもなぜかぼくらがここで降りると、住民の車のエンジンをスタートさせるためか牽引の手伝い。ここの人がそんな助けを必要としていることをどこで知るのか非常に不思議。携帯?もしくはたまたまだったのかな)
朝10時前に480キロ地点大紅柳灘(ダーホンルータン)着。ここで朝飯。建物の裏でぼくはまた凶暴な犬に追いかけられました(実は塔河でも二人で犬に追われてたり)。チベットもウイグルも、犬がとにかく凶暴で、激しい剣幕で追いかけてくるので本当に恐ろしくていやなのですが、最近は恥も外聞も捨てて、悲鳴を上げながらダッシュで逃げると大丈夫な気がしてきてます。
(朝飯を食べた大紅柳灘)
ここでもう二人が降りて、車内は4人になってぐっと快適に。二人とも体調も悪くなかったので、もうあとは快適かなと思っていたら大間違い。ここからが二人にとって地獄となりました。
このあたりから、いよいよ中国とインドの国境未画定地域。事実上中国が支配しているだけで、人はほとんどいなく、ただただ土と雪山の荒涼とした絶景が続きます。ここの辺は昨日の夜の景色に続き、まさに圧巻。
(日差しの強さと寒さは半端ない。写真もほとんど投げやりにパシャパシャ)
そして、途中高度は5200mまで上昇。二人とも頭痛と吐き気に苦しみだしたのはまさにこのあたり。高山病の基本的な症状が次々に現れ、とにかく苦しくなりました。水を飲み、深呼吸を続けるものの、そんな古典的手法は通用しないのか、高山病の薬も飲むものの一向に回復せず。たまに停めてもらって外で新鮮な空気を吸うも、寒さが半端なく外にはそんなに長くいられず。そしてそのまま夕方までドライバーは時速70~80キロで突っ走り、午後4時半ごろにドマルで夕食(公安のチェックもあり)。あと残り280キロ。
(ドマルのチェックポイント。本当は、外国人は許可証なしには入っていけない地域なのに、聞いていたとおり、警察はそんなこと何も気にせず、どこでも「旅行か?いまは寒いぞ」みたいな感じ。写真を撮りつつも絶不調)
しかし、ここでは二人とも完全に死に体。夕食などもちろん食べる気になれず。ぼくはもう吐気に我慢しきれず、口に指を突っ込んですべて出し切りしました。その一方で、耐え忍ぶ素子。
「あと4時間」という運転手の言葉に、励まされるような、泣きそうになるような気分で、出発。素子はここから爆睡態勢に入ることに成功し、徐々に回復。その一方、ぼくはせっかく吐いたにもかかわらず吐気はおさまらず、頭痛も順調に激化。そしてどこから沸いてでたのか、伏兵的な腰痛に襲われ、不快度はこの旅中の最高記録を更新。モンゴルの24時間など全然アマちゃんな気がしてきちゃったり。
残り120キロで舗装路が始まり、それだけでもぐっと楽になり、うれしくなるも、なぜか途中で、真っ暗闇の中でまたドライバーが停まり「タイヤの空気を入れるよ」。おい、スムーズに走ってるのに、いまそんなことしなくてもいいだろう!といいたくなるぐらいのわけわかんないタイミング。その後また、公安のチェック(ここではなんと公安が運転手にこの酒いいぞ、飲んでけ飲んでけ、と勧め、運転手が必死に断ってました(笑)。めちゃくちゃです)があって降ろされたりして、時間を食うも、なんとか耐え切り、9時半にアリ到着。
宿探しを運転手にも手伝ってもらって、なんとかそこそこの宿を見つけ、倒れこむように休みました……。今日朝起きたら、まだ頭痛はおさまっていなかったものの、昼ごろになってやっと回復してきました。高山病、侮れず。ちなみにアリは標高4200m。
あと数日ゆっくりしてなんとか高地適応ができれば、グゲ遺跡(これまたすごいらしい!)とカイラスへ向います。栄えあるチベットの聖地だけになかなか簡単にはたどり着かせてくれません。また帰りにこの30時間をやらないといけないと思うと本当に憂鬱になりますが、帰りは高地適応後だから多分もっと楽なはず、と期待。ランクルが安くで見つかってラッキー、と思ったものの、実は寝台バスで横になっていった方が楽だったかも。時間も全然短くなかったし……。帰りはバスにします。。。
しかしすごいのは運転手。一人で全行程を走りきり、しかも、昨日の夜降りる前に、いつ零公里へ帰るのか、と聞くと、客がいれば明日かえるよ、と。常人のわざとは思えません。でも前回書いたように、おじいさんの年金が月に148元のところ、ランクルであの運転さえこなせば一回で数百~千元とかになるわけだから(ガソリン代が満タン入れて500元ぐらいだったけれど、1100キロでどれだけ使ったかは不明)、熱も入るというもの。
(「寒い!辛い!でもすごい!!」)
読んでいるだけで高山病になりそうな…。
でも素敵な空の色。
天空って言葉が浮かんできました。
事故にはお気を付けて。
といってもドライバー任せでしょうが。
いや~車中かなり酸っぱそうですね・・・僕だったら間違いなくその連鎖に加わってます・・・笑
北京の生活にはだいぶ慣れてきました!一人で買い物も出来るようになりましたし、バスにも地下鉄にも一人で乗れます!笑僕も中国にいる間にいろんなところを旅行したいなーと考えてます。道中お気をつけて!
Sugoi,sugoi! Yondeite kandou shite namida ga nijimimashita.
Ohutari no tabi no buji wo inotte masu.
Mou sonomama Tibet wo meguri tsuduketemo iinodeha ?
>いしづか先生
いやあ、高山病あなどれないです!
寒さもすごいし、今回はほんとに大自然の力の前にひれ伏してしまいそうです。でも風景は凄まじくきれいで(写真だとなかなかその雰囲気が伝わりませんが…)、こんな思いしても来た甲斐はあったなって思ってます。まさに「天空」っていう世界です。一応バスは「安全第一」!を銘打ってますが(笑)、祈るだけですね。
>yang pingさん
北京生活、順調に進んでいるようで何よりです!中国西部はほんとに変化が多くて面白いから是非中国にいる間に来てみてください。北京もすでにかなり寒いと思うけど、体には気をつけて!
>USHIYAMAさん
ははは、そんなに感動してもらえるとうれしいですー(笑)。でも、もうチベットにはそんなに長くいられなそうです……。ここまで来ただけでもそれなりに達成感はあったな、と自分を納得させてますが。。。