カルパ村からのマイクロバスは,レコンピオを経由してサトレジ河 (Sutlej river) の流れる谷まで一旦くだり,岩が頭上すれすれに覆い被さっているような崖際の道を乱暴に蛇行しながら,サトレジ渓谷の下流へと進んでゆく.崖道を数十分走ったところで,バスパ河 (Baspa river) の流れるサングラ渓谷 (Sangla valley) へと道を折れ,時折キナール・カイラスを左に仰ぎながら,ゆっくりとしたペースで渓谷を登ってゆく.バスの車窓は,日本の晩秋の昼下がりという風情で,この時期まだ暖かい日中の陽と紅葉した木々とが眠気を誘うのか,バスの乗客のほとんどが眠りにおちている.
いつの間にか自分もしばらく眠っていたようで,バスを降りようと思っていたサングラ村 (Sangla village) をしばらく乗り過ごしたところで目が覚めた.乗り過ごしたおかげで,村に到着したときには既に日が暮れかけていたが,古都カムルー村 (Kamru) をちょっと見ておきたいと思って村の外れを散策してみた.遠目に見る丘上のカムルー村は,背後に急峻な岩山を聳えさせ,足回りにリンゴの果樹園を配し,この地方の古都らしく威風堂々としている.