at インド ティクセ (Tikse) on 22/Sep/1999
ティクセの頂部にあるDukhang(本堂?)では毎日読経が行われている.昼の読経は11時からだというので,ゴンパのコンプレクスを徘徊する.Dukhangの屋上へ登ると,巨大なラッパ(名はなんと言うのだろうか)が2つ,行儀よく並んでいる.大空に向かって力一杯吹くと,いったいどんな音がするのだろうか・・・
読経の時間が近づいた頃,2人の若い僧が屋上へ姿をあらわし,読経の合図だろうか,心もとない息づかいでラッパを奏でる.Dukhangへ入ると,50人ばかりの僧たちが続々となだれ込んできて所定の位置に座ってゆく.トップライトが差し込む堂のなかで,やかんの先から甘ったるい匂いのする湯気をふりまきながら,せわしなく小僧さんがバタ茶を注いで回る.高僧とおぼしき人物が一番最後に入ってきて堂の奥に座し,何やらモゴモゴとマントラを唱えて読経が始まった.
どこの世でもちびっ子はちびっ子で,入り口付近の若い僧はどうにも落ち着かない様子.隣や向かいの仲間とおしゃべりが弾み,きょろきょろしたり,あくびをしたり,オレンジ色のキク科とおぼしき花輪を鼻の穴に差し込んで悦に入っているのもいる.そんなところへ,フワフワと白い綿毛が堂の入り口から漂ってきて,どんどんと堂の中央に向かって進んでゆく.トップライトを受けて銀色に輝きだした綿毛を僧たちが見逃す訳は無く,「綿毛,あっちいけフーフー大会」が開始された.小僧だけでなく,もっと奥に座っているいい年をしたおじさんも綿毛に夢中で,必死で食らいつこうとする.が,あまりに盛り上がってしまったので,さらに奥に座っている長老級の僧に見つかって,綿毛を取り上げられてしまった.つかの間の大会の間,もちろん読経は続いている.
始まって30分を過ぎた頃から,だんだんと皆の頭から煩悩が消え,堂の空気の一体感を感じる.時折,僧の頭がキラリと鋭く光ってハッとする.それからしばらくの間,それはそれは贅沢な時間でした,