変だ。絶対変だこんな道。オモチャか遊びで造ったとしか思えない。
切り開かれた姿が痛々しい薄茶の土地に、車幅ギリギリの絶壁道だけがくねくね模様を描いてせり出している。その高さ5mくらい。ガードレールなんて望めもしないし、角の鋭いこれまた薄茶の石ころが転がっている。そこを、何故か落ちない技術と何故かパンクしないタイヤが、乗客と恐怖と感動を運んで行く。きっと皆が各国語で突っ込みを入れていたに違いない。
弾む車内で背もたれに頭がぶつかり痛いので、空気枕を当ててみた。途端、ポンと弾んで前の座席で額を打った。
今日はこんな変てこ道を越えて、タイからベトナムへ。
地続きでも国境は怖いくらいハッキリと存在している。
ベトナムへ入ると、突っ込みの入れようも無い平らなアスファルト道を、A/Cバンバンの大型バスが滑るように進む。こげ茶色の川に、菅笠姿を一つ乗せた小舟が浮かぶ絵葉書のような光景が、曇ったガラス窓を通して幻想的ににじむ。そして、超大量のチャリとバイク。
ドンヨリ空にシトシト雨の日が一番カラフルになる素敵な国だ。
二輪車全体を覆う大きな大きな雨合羽が連なる様子は、絵の具のパレットそのもの。しかもメーカーも複数あると見え、同じ色でも微妙に形や色味が違っていて、覆われた個性を新たに作り出している。そこから覗くのはドライバーの顔だけだが、その前や後ろはポコポコと、同乗者の頭の形にふくらんでいる。