村林由貴さんの襖絵展は、連日大盛況の中、終了しました。2週間で4000人以上の方がいらっしゃってくださり、村林さんはじめ関係者一同、みなとても喜びつつ、こんなに大勢の方に注目していただけたことを感謝しております。
プロジェクトは、まだあと少なくとも1年半は続きます。
これから壽聖院本堂に取り掛かり、そのあとに、退蔵院本堂となります。
それまで引き続き、ご支援をよろしくお願いいたします。
さて、自分は引き続き取材を続けていますが、いまは、襖を作る職人の世界について取材し書いてます。襖絵の中には、どんな人や技術がひそんでいるのか。
今週月曜は、その取材で、茨城県の水戸へ、京都造形芸大の青木芳昭教授のご自宅を訪問しました。青木先生は、画材についてはおそらく日本で最も造詣が深い方であり、彼が、このプロジェクトの素材について統括しておられます。
「400年持つ襖絵を」というコンセプトを実現するために、どんな仕様の紙、墨などを使えばいいのか。青木先生が職人の方々と相談しながら決まった最高の素材が、このプロジェクトでは使われています。
青木先生は、ご本人も画家であり、描き手の立場として、素材の重要性を実感してこられ、とことん素材にこだわって絵を描いてきた方。墨、硯、紙、膠、顔料、筆など、おそらく日本で、もしくは世界でも最も膨大なコレクションを持つだろう方で、ご自宅には、驚愕してしまう貴重な品々の数々が、所狭しと並べられていて、衝撃的なほどでした。
描き手にとって画材を知ることは極めて重要であることが青木先生と話すととてもよくわかりました。
「歴史に残っている作品は、残るべくして残っている。それは使ってる素材がいいから。最高の芸術家はみないい素材を知っている。ゴーギャンはタヒチに行って、いいキャンパスがないと、ジュート麻に膠をまぜて、素晴らしいキャンパスを自ら作った。セザンヌは、貧しい時代から最高のキャンパスを使ってるし、ミケランジェロもまたいい石で彫っている。若冲も、使っていた絵具がすごい。だから2,300年経ったいまも色が鮮やかなまま」
彼らはいい素材が分かるから、それで絵を描き、彫刻を彫る。だから彼らのもとには自然にいい画材が集まってくる。するとそれが何百年経っても、物理的にそのまま残り、作品が歴史に残る。
そして作家が歴史に名を残す。
芸術家が職人たちの仕事を知ることの重要性はまずそこにある。日本では、芸術家が素材についてほとんど知らないのが大きな問題だと、青木先生は考えます。大学でもほとんど教えられていない。描ければ素材などなんでもよい、という空気すらある。でもそれでは絶対にいけない。
本物の素材を知り、それを使うことがいかに重要か、心より納得しました。
自分は全く絵に縁のない世界で生きてきましたが、ゾクッとくるような感動を得ました。
墨、紙、襖の世界には、非常に長い歴史、伝統、人々の足跡が詰まっています。その世界について、プロジェクトと絡めながら、来月出る芸術系雑誌に書きます。
自分が感じた感動を最大限表現するには、どうすればいいか。いま毎日悩んでます。