September 6, 2007

ホーストレッキング2(人物&技術編)<Khovsgol Lake, Mongolia>


さてホーストレッキング、昨日の風景編に続いて、その他もろもろ編です。
草原、山、湖の大自然を体感した以外に、実にいろいろなことを学ぶ日々でした。馬で移動しながら水のあるところで火をおこしてテントを張って、とやっていると、ほんの少しですが遊牧民たちの生活リズムや感覚が分かるような気がしてきました。

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(ご飯の様子。ガイド二人とぼくらでそれぞれ鍋で簡単な料理を作る。後ろの少年は、そばのゲルに住んでた子。ハイジみたいだった)

ぼくらは二人ともアウトドア経験が少ないため、テントのたて方も今回初めて知りました。初日、広い平原に何も考えずにテントをたてたら、夜中やたらと寒くなり、二人ともほとんど寝れなくなってしまいました。寝袋、ダウンはもちろん、そのたあらゆる防寒具を身に着けるも寒さは遠のかず、ただひたすら陽が照るのを震えながら待つ、という厳しい展開。朝見てみると、テントはパリパリに凍ってました......。まるで冷蔵庫の中に寝ていたような状態だったわけです。

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(凍ってしまったテント)

そのせいで二日目は、眠気と筋肉痛で、かなりハードに。ぼくは馬の上で何度か意識が遠のき、昼飯時にはぐったり。で、前日の夜を思い出すと夜が来るのが怖くなり、なんとかうまい方法はないかとずっと考えた挙句、野原に吹きさらしになっていたのがまずかったんだろうという結論に達し、この日は、周囲に風避けとなる木や崖があるような場所を選んで泊まることに。そしたらぐっとましになりました(素子はそれでも十分には寝られなかった様子......)。

また、キャンプしてて驚いたのは火の生命力の強さ。夜ご飯を作るために火をおこし、その後消えるわけですが、テントが凍ってしまうような寒い夜を越えても、まだその火種は生きているんです!朝起きて、前日におこした火の跡の上に木の枝を置き、丹念にふーふーと吹いていると、いつしか、煙が出だし......、ボッ~!、と燃え上がりました。もちろん、マッチなどなにもなしで。これにはギョウテン。モンゴルがすごい乾燥しているからなのかもしれませんが、モンゴルでは、山火事の火の残りがマイナス40度の数ヶ月の冬の間中、地中で眠って、夏にそれがまた発火することがあるというのを読みましたが、それを肌で実感しました。

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(極寒の夜を越えてから復活した火!)

それとあと、ちょっとでも水があれば、いつもそのそばにはゲルがあって、人が住んでいることに感動。初日も「あそこに水があるから泊まろう」ということになって、その水のところへ行ってみると、岩の間のほんの小さな水溜り。「えっ、これ?」と思ったのですが、そばのゲルにすむおばちゃんが上澄みを脇によけてうまい具合にきれいなところだけを掬います。「いや、こんな小さな湧き水を頼って住む場所を決めるのだから、すごいなあ」と感動してしまいました。二日目は、いけどもいけども水がなく、川は干上がっていたのですが、最後に地面がぬれてきて水がありそう、と分かると期待が膨らみ、その先に小さな小川が出てきたときには、まるで金脈でも掘り当てたようなうれしさでした(ま、ガイドはそこに川があることは当然知ってたんでしょうが(笑))。

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(初日に泊まった場所の水。下の写真の左側、岩の間の小さな空間にしか水はない。でも、これを頼りに数家族が近くで暮らしていた)

月並みですが、水と火のありがたみをつくづく実感。アウトドア派にとっては当たり前だろうことを初めて体験し、驚きと感激の連続でした。

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さて、上の写真は、トナカイ放牧のツァータンの家族。観光客に囲まれた彼らは、イメージとは異なり、お母さん以外はみな普通の服装。お母さんも、成金っぽい陽気な面白いおばちゃんで、ぼくがしているシルバーのバングルをみて「それはどこの国で買ったんだい?」そして、キセルをふかしながら「このキセルはねえ、ここに来た観光客が私にくれたんだよ」とニヤリ。すなわち「そのバングル私におくれ」ってことだろうなと解釈できました。欲の面の皮(ってあってますか?)の張ったおばちゃんだ、と言いたいところですが、ツァータンのイメージを一新させる新鮮な存在かも......?通訳によれば、他のツァータンたちは、ツーリストたち相手にビジネスを始めた彼らのことを嫌っているようだと言っていましたが、人生いろいろ、といったところでしょう。

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↑これは、最後の夜に泊めてくれた家族のゲル。商売で泊めているのですが、少しは家族の一員になった感じあり。手前のたらいに入っているのがヤクのヨーグルト。ヨーグルトの味にそれほどこだわりはないものの、かなり濃厚でフレッシュでおいしかったです。思わずおかわり。ヤクのthick creamも一緒に出てきて、これをパンに塗って砂糖をまぶして食べるのですが、非常にグッド。

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(少年がかき回しているのがヨーグルトを作る細長い樽)

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(ヤクの肉のおじやを作ってくれて、みんなで食べる)

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(家主のおばちゃん)

そして次はガイドの家。

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(初日に寄ったガイドの家)

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(食べているのは、羊のあらゆる内蔵を味付けしたもの。これを各自ナイフで適当に切って食べます。「うお、ちょーワイルド」という印象の食事風景でしたが、食べてみるとなかなかうまくて、いくつも食べてしまいました)

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(家の入り口に干してあった羊)

途中の町の宿で仲良くなったイスラエル人に、モンゴル人が羊を殺す様子を動画で撮ったものを見せてもらいました。確か二人で4本の足を押さえ、お腹を上向きに寝かせ、腹をさーっとナイフで切り、いきなりその中に腕を入れて、もぞもぞやって心臓をもぎ取っていました。羊はさすがにある程度もがいてはいたものの、その間一分ほどで、とくにひどく苦しむ様子もなく鬼籍入り。血は一滴も出ず。

馬はどうやって殺すのかと通訳に聞くと、「オノの刃の逆側で脳天を叩いて頭蓋骨をかち割るんだ」と言っていました。通訳の家族は、家族4人、そうやって一年に馬を1頭、ヤクを2頭、ヤギと羊をあわせて4,5頭殺して暮らしているとのこと。「馬もヤクも、あくまでも動物で、ペットではない。だから殺すことに何もためらいはない」と彼は言い切っていましたが、そう考えることができてこそ初めて遊牧民たちの生活は成り立つんだろうな、と感じました。

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(ぼくの隣が通訳で、素子の隣がガイド。通訳の英語も相当片言で、とてもいいやつそうだったガイドとちゃんと話せなかったのが残念。鍋、木製の鍋の持ち手、スプーンなどというほとんど応用の利かないモンゴル語を5日間でマスター)

ホーストレッキングはそんなところでおしまいです。

さて、今日の夜いよいよウランバートルを出ます。夜行列車でロシアとの国境の町スフバートルまで行き、そこでおそらく一泊してから、ロシアのイルクーツクへと向かいます。イルクーツクはおそらくもう西洋の世界。白人ワールドはオーストラリア以来で久しぶりなので、とても新鮮で楽しみです!

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(今日は国境の町スフバートルまで)


Posted by ykon at September 6, 2007 2:50 PM | トラックバック
コメント

お疲れさまでした~。
読んでいるだけで…さぶっ…ってな感じでした。
でも過酷な自然環境の中でも幸せに暮らしている人がいる
そのことを知れるだけでも我々の贅沢への反省につながりますね。
いよいよロシア…ムリは禁物ですよ。

Posted by: イシヅカ at September 6, 2007 4:25 PM

いよいよロシアですか〜〜〜 きをつけてね〜 ブログのアップを楽しみにしています。

Posted by: みけっち at September 6, 2007 6:42 PM

いやーすごい!
今回もかなり読み応え
ありますね~
キャンプ、夏でも寒いときあるのに
テントが凍るって・・・・
すごいなぁ。
ロシア編も楽しみにしています!

Posted by: Chie at September 6, 2007 7:46 PM

あ~なんかモンゴルに行ったときのことを思い出します!
私はヨーグルトはモンゴルで食べたのが一番美味しかったですね、ひいき目なしで。
ウランバートルの友人の家でも、羊の肉が大皿に山盛りドン!と出てきて「はい、これが晩ごはん!」というかんじでした。モンゴルはホント肉と乳製品ばっかしか食べないんだなあと思ったものです。

Posted by: n y at September 7, 2007 11:06 AM

>イシヅカ先生

どうも!
そうですねー。わずかな水と動物があれば人間生きていけるということを知るのは、とてもいい経験でした。あの水に頼って、彼らはすでにあの場所に10年いるというのだからほんとにすごいです。生き方はほんとに様々ですね。やっと入れたロシア、気をつけて楽しみます!

>みけっちさん

お久しぶりです!イルクーツクについたらいきなりなかなか寒くて、やっぱり北海道を思い出しますね。みけっちさんもお元気で!

>ちえちゃん

ヨーロッパの旅行者によれば、ヨーロッパは高いから、国によってはテントは必須っぽいね。オーストラリアのキャラバンパークのようなノリなんだろうね。というわけでキャンプ知識も徐々につけないとなって思ってます。ロシアはやはり寒そう!

>nyさん

モンゴルはやっぱり食生活偏りますよね。現地の人は、あれで大丈夫みたいなんだから、体がそういうようにできているんでしょうね。ウマを見ていたら、どうしてあの体を草だけで維持できるのか不思議な気がしたけど、それぞれ生活スタイルによって順応していくのだろうな、と。こっちのヨーグルトはほんとにおいしいですね~。

Posted by: ゆうき・もとこ at September 9, 2007 12:01 PM
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