「国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて」(佐藤優 新潮社)を読んだのですが、久々に、唸らせられる本に出会ったという気がします。
読みたいと思って図書館に行ったものの、世田谷区中の図書館ですべて貸し出し中ということで、あきらめるかと思っていたときに(ま、買えばいいんですけどね)、偶然友人が、是非読めと、その本をくれたので、読むことができました(ヨカワ→ありがとー!)。
著者の佐藤優氏は「鈴木宗男事件」のときに、その関連で逮捕された外務省の役人。で、2005年2月に懲役2年6カ月執行猶予4年の判決を受けたものの、それを不服として現在控訴中の人物です。「国家の罠」は、彼が、この事件を「国策捜査」だとして、自分がその中に巻き込まれ逮捕されるに至った経緯と、自分の主張、拘置所での生活などについて書いたものなのですが、いろんな意味で、間違いなく一読に値する本だと思いました。
今日の朝、ユースホステルのベッドで読み終え、その内容はもちろんのこと、読み物としての完成度も高いことに唸らされたので、忘れないうちに書いておきます。機会があれば、是非。お薦めです。
今は、上海の中心街の香港新世界というビルの地下のカフェの中。上海に駐在する高校時代のバスケ部の先輩に昼食をごちそうになった帰りです。夜は、昆明時代の友達で上海で働いている人たちと会います。上海は知り合いが多いって意味でも楽しいです。
しかし上海、水がほんとにまずい!さらに、安い食べ物がまずい!この二点が結構つらいです。
雄生
(こんな写真を見ていると、また旅に出たくなってくる・・・)
「国家の罠」を読んだあとの僕のブログの抜粋です。
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今日、元外務省情報分析官・佐藤勝氏の「国家の罠」という本を読みました。
読み物としては非常に面白かったのですが、内容的にはいくつか気に入らないところがありました。例えば、役人を生かすも殺すも政治次第と、政治手腕のない小役人タイプの役人を馬鹿にし、政治のダイナミズムの重要性を一貫して主張しているにも関わらず、自分の逮捕は「国家の罠」と切り捨てている点です。
佐藤氏の逮捕が政治的なものだったのかどうか良く知りませんが、仮に政治的でなかったら「お前は実際に悪い」という話だし、仮に政治的だったら「これが政治だ」という話であり、あまり同情の余地はないなぁと思いました。
もう一つ感じたのは、佐藤氏が極端なナルシストだという事です。何度も自分は国益のために働いてきた的な事を強調をしているのですが、そこには、国益と組織(外務省)の狭間で苦しむ個人の姿というより、むしろ(彼個人の考えるある意味自分勝手な)国益のために働いているという自己陶酔感が写されているような気がしました。
ノビーこと落合信彦氏によれば、イスラエルの諜報機関モサドは自分から志願してきた人間を雇わないそうなのですが(従って採用はすべてモサドの一本釣り)、その理由は「自分から諜報活動したいという奴は勘違いしたナルシストばっかりで、スタンドプレーをしがちで使いものにならない」なのだそうです。まさに佐藤氏は、この「勘違いしたナルシスト」という範疇にど真ん中ストレートで当てはまるような気がしました。
また佐藤氏は「能力なくてやる気がある奴が一番害がある」という某外交官の言葉を引用しつつ、それに対して好意的な評価を与えていました。佐藤氏の能力が高かったというのは事実なのかもしれませんが、一歩間違えば彼自身が最も有害な外交官の範疇に入るかもしれないということを、佐藤氏が一瞬でも考えたことがあるのかを疑問に思った夜でした。
Posted by: nakai at February 18, 2006 3:14 PMなかいへ
久しぶりー!
元気にしてる?まだワシントンにいるのかな?こないだ何度かブログ見てみたけど、しばらく更新されてなかったよね?どうしてるかな、と思ってました。
ところで、「国家の罠」について。実際おれは、外交のこととかまったく分からないし、またあの本自体、渦中の本人が書いたものなので、反対の立場で書かれた本も読みたいなと思ってるところです。って、そんなのないのかもしれないけど。
おれも確かに、彼の文章を読んでて、ほんとにそんなに国益のことばっかり考えんのかなー、って疑問は残り、そういう意味で、かなりプライド高そうな人だなっていう印象は受けたんだけど、まあ、自伝的な本は必然的にそうなりがちなので、そういうところは読みながら差し引くしかないかなって思った。個人的には、それを考慮しても、なかなかすごい人物だなっていう感想です。特に、知的に、っていう意味で。
で、そういうこととは別に、彼の展開する論は説得力があるように思えるし、あの検事の発言などが事実なのだとすれば、「国策捜査」云々の話っていうのは、かなり興味深いと思った。
細かい疑問はところどころ残ったものの、ワイドショー的なメディアの力がますます強まり、国全体がそういう力に大きく左右されているように見える今、彼の正否は別として、広く読まれるべき本だと感じたよ。自分みたいに国の外交とは遠い世界にいる人こそ、こういう背景について知るべきだと思った(もちろん、鵜呑みにするという意味ではなくて)。