メーホーソンを出て、さらに南のメーソートという、ここもまた国境の町に来て5日目となりました。
(メーホーンソンからメーソートへは、トラックを改良したような乗り物、ソンテウで6時間。いきなり変な写真からすみません)
この町は、カレン族というビルマの少数民族の独立闘争と深い関わりのあるところです。ビルマでは、アウンサン・スーチーに代表される民主化運動とともに、長年続く少数民族たちの「民族解放」を目指す闘いがあります。
その中でももっとも活発な独立闘争を続けていることで知られるのがカレン族です。カレン族は戦後、武装闘争を開始してからすでに50年以上がたち、今もカレン民族同盟(KNU)などの組織が武装してジャングルに住みながら、彼らを潰しにやってくるビルマ国軍と戦っています。
しかしこのカレン族の戦いはもはやひどく複雑なものになってしまっています。KNUの指導層も腐敗は目立ち、内部抗争もあり、そして彼らの要求が達成されることはほとんどありえないともいわれ、カレン人のKNU離れも進んでいます。
そして戦いに巻き込まれたカレン人たちが多く、タイビルマ国境付近の難民キャンプでの生活を余儀なくされています。
そしてメーソートは、そんなカレン問題に関わる人々のタイ側の窓口となっています。難民キャンプもそばにあり、カレン難民をたすけるためにNGOなどもいくつもあるようです。
(右側がビルマ、こちら側がタイ。地元の人たちは川を泳いで行ったりきたりしている人も多いとか。中央の黒い点は泳いで渡っている地元の人)
その中に、難民キャンプのカレン人たちが自ら立ち上がれるために高度な教育を与える、ということを目的で開いている小さな「学校」、PEC:Peace Education Centerがあり、そこを訪れるのが、メーソートにきたぼくらの主な目的でした。運営しているのは、日本人とカレン人の夫婦、東さんとスウィートさんです。彼らは難民キャンプから10人程度の勉強熱のある人を選抜し、彼らを自宅に住まわせながら、一年間程一緒に暮らしながら教育しています。
(居間、ダイニング、教室を兼ねる部屋で熱心に教える東さん)
(平日はNGOで働くスウィートさんも週末に生徒達を集めて授業を開くことも。2,3週間後には隣接するクリニックで生徒達が英語を教え始めるそうです。そのためのトレーニング風景)
まずどうしても必要となる英語を半年ほど集中的に教え、それから徐々にカレン族として自らが立たされている立場や世界の状況を自ら考えられるように、民主主義とは何か、今カレンがそのために闘っている「民族自決やナショナリズム」といったものは、どういうものなのかということを教えています。
そして生徒たちはとても真剣に勉強し、確実に成果は上がっているようです。もともと通訳がいないと東さんと話ができなかった子たちも、半年後、一年後には、なかなか流暢な英語を話すようになっていますし、去年PECを卒業した子の中には、その後さらに勉強を深めようと、カナダのトロント大学へ行くことが決まっている子もいます。
私たちは、メーソートでは、日々PECで授業を見学したり、ディスカッションに参加したりして過ごしています。
(週1回のディスカッションのクラスに私たちも参加しました)
東さんとスウィートさんは、生徒からは一切お金を取らず、なんとこの教育をほぼすべてを自分たちの貯金で行なっています。
また、メーソートの町からバイクで1時間ほどのところにある難民キャンプにもつれて行ってもらいましたが、難民キャンプといっても一つの巨大な村という感じで、中には店もあり、ひとびとは基本的な生活物資に困ってはいないようです。ただ、キャンプの外には容易には出られない、ただそこで生活しているだけで、教育を受けたとしてもそれを生かす機会が殆どないなど、彼らの自立への道はまだまだ厳しそうです。
(国道沿いに3キロほどの一帯にタイで2番目に大きいメーラキャンプがあります)
(道路沿いの空き地でサッカーする難民の子どもたち。後ろはキャンプ)
(キャンプの中。家と家が密集していますが、ごく普通の村という感じ)
(キャンプの中で遊ぶ子ども達)
さて、メーホーンソンでは残留日本兵の妻と孫娘から大変興味深い話を聞くことができましたが、メーソートには残留日本兵の方がまだ元気に暮らしていらっしゃるということを聞き、先の東さんの紹介で明日会いに行くことになりました。
そのことはまた後日書きます。
(メーホーンソンで出会った日本兵の妻のギャンさんと孫娘のポーパ)
(メーホーンソンからバイクで南に1時間半のクンユアムでも残留日本兵の奥さんに会うことができました。8年ほどの結婚生活の後、日本兵はタイ当局に逮捕されその後の行方はわからないとのことです)
まだまだ話題は尽きることなく、あと1週間以内にはまたビザを更新して、もうしばらくタイにいることになりそうです。
それでは、また!
雄生・素子