OracleやSunなどの大手企業も名を連ねる業界団体が、Windows XPのバンドル戦略について欧州委員会に苦情を提出。欧州ではMicrosoftに対しいくつか調査が行われているが、もっと総体的な調査と将来を視野に入れた是正措置を求めている(ロイター)
大手ソフトメーカー、通信会社、電子機器メーカーで構成される団体が2月11日、Microsoftの最新版OS「Windows XP」が競争を阻害しているとして欧州委員会に提訴した。
訴えを起こしたのは米国の業界団体Computer & Communications Industry Association(CCIA)。折しも欧州委員会では、Microsoftが旧バージョンのWindowsで違法行為を行ったかどうかについて、Mario Monti競争委員らが判断を下す日が近づいているところ。
Reutersが同日早朝入手した260ページにわたるCCIAの訴状には、欧州委員会は、Microsoftのやり方を断片的に調べるのではなく、独占を維持するため組織的に計画された戦略として総体的に調査すべきだと書かれている。
しかしMicrosoftのBill Gates会長は米国の独禁法訴訟で、競合他社が市場で失敗したのは自業自得以外の何者でもなく、これらライバルは裁判所を利用して不正に利得を得ようとしていると主張していた。
CCIAは消費者のために戦うとして、次のように述べている。「Microsoftの圧倒的な独占支配とその独占力の乱用は、欧州の隅々にまで及んでおり、実質的にコンピュータを使うすべての企業と消費者に害を及ぼしている」。
Microsoftのスポークスマン、Jim Desler氏は、CCIAの訴えについて、「こうした申し立ては以前からあったものだ。それを、皮肉にも(独占禁止問題調査)のプロセスに影響を及ぼそうとしている団体が焼き直している」と表している。
大手が顔を並べるCCIA
CCIAには世界最大級のハイテク企業がいくつか名を連ねている。ソフトメーカーのOracle、コンピュータメーカーのSun Microsystems、Webメディア企業のAOL Time WarnerとYahoo!、携帯電話メーカーのNokia、イメージング企業Eastman Kodak、電子機器メーカーの富士通などが、同団体に加盟している。
CCIAのプレジデント、Ed Black氏は、「欧州委員会にはこの件に関して深い知識のある担当官がいるが、かたや米国では、そうした知識を持った人たちが司法省を去ってしまった」という理由で、欧州委員会に苦情を持ち込んだとしている。
欧州委員会はこの新たな申し立てを検討する意向だが、既存のMicrosoftの独禁法違反の調査と併せて調べることはないと同委員会の広報官は話している。CCIAは、Microsoftが最新版のWindowsにいくつものプログラムを抱き合わせたと主張している。米国の裁判所では、Microsoftがブラウザ市場のライバルであるNetscapeをつぶし、またWindowsを守るために独占力を不正に行使したとの判決が下されている(2001年6月の記事参照)。
CCIAは、Netscapeの例は(Microsoftに対する)効果的な是正措置を生み出す代わりに、Microsoftと競おうとしている企業に「Windowsにバンドルされた製品と競合してはいけない」という教訓を残したと主張する。
「Microsoftの抱き合わせ作戦によって、代替製品は締め出されている」と訴状には記されている。(Windowsに)バンドルされているすべての製品が、競争相手になり得る製品を排除しているとCCIAは言う。
Windows XPにはブラウザのInternet Explorer(IE)とMSN Explorer、オーディオ/ビデオ再生ソフトのWindows Media Player、インスタントメッセージング(IM)ソフトのWindows Messenger、電子メールクライアントOutlook Express、ビデオ編集ソフトのWindows Movie MakerがバンドルされているとCCIA。
新たな競争を求める
CCIAは、新たな競争が生まれるよう、MicrosoftがWindowsからバンドル製品を切り離すことを望んでいる。「今でもまだこれらの市場を救済することは可能だ。これら市場は大きな危険にさらされている」とCCIAの弁護士Tom Vinje氏は言う。
Vinje氏は、バンドルされたMicrosoft製品は安くはないとしている。「消費者はこれら製品の代金を支払っている。Officeの価格を見てみるといい」と同氏。同氏は、ほかのハード/ソフトの価格はここ10年で大幅に下がっているのに、Microsoftの独占価格はいまだに高いと指摘する。
米司法省の独禁法訴訟で、州の検事総長がこれと同様にバンドル禁止を提案した際、Gates氏は、そんなことをすればWindowsの開発を10年「遅らせる」ことになると反論した。
結局、米連邦地裁のColleen Kollar-Kotelly判事は、州の検事総長によるバンドル禁止の提案は、当初の訴訟の範囲を超えているとの判断を下した。
CCIAが訴えを起こした狙いは、Microsoftが新しいソフトでも同じ戦術を繰り返すのを防ぐ、将来を視野に入れた是正措置を求めることにある。
欧州連合(EU)法の下では、独占的な地位にある企業は市場での大きなアドバンテージに対する埋め合わせとして特別な義務を負い、競争の維持を図るよう規定されている。
だがCCIAは、(Microsoftの)独禁法違反によって、Linuxがコンピュータデスクトップで足がかりを築くことが妨げられていると主張する。またApple Computerの世界シェアが5%を切ったのもそのためだと、同団体は述べている。
Gates氏をはじめとするMicrosoft幹部は、同社がWindowsの独占力を利用してLinuxやRealNetworksといったライバルを邪魔したという主張は事実ではないとしている。
MicrosoftのDesler氏は次のように語る。「(CCIAは)苦情や訴訟に力を入れずに、他社と前向きに協力すればいいのに。当社は欧州委員会と協力していくことを心待ちにしている」。
消費者とライバルに損害
CCIAは、Microsoftは独占市場を増やしており、同社が高い価格で製品を売り、選択肢を与えず、革新をもたらさないことで、消費者が打撃を受けていると申し立てている。同社は.NETプログラムによりWebに対してあまりにも多大な制御力を得ることになる、とも。
CCIAは是正措置として、Microsoftにコンピュータメーカーとのライセンス条件を公表させることを求めている。同社はそうした機密情報を公表すれば、損害を被ると主張している。
CCIAの新たな苦情を受けた欧州委員会のMonti競争委員らは、これまでのMicrosoftに対する独禁法違反の申し立てについて、結論を出そうとしているところだ。
そうした申し立ての1つとして、EU規制当局は、MicrosoftがMedia PlayerをWindowsにバンドルしたことで、RealNetworksやAppleのQuickTimeといったライバルが不公正な形で打撃を受けたと主張している(2001年8月の記事参照)。
また欧州委員会は、MicrosoftはWindowsが他社よりも自社のサーバ製品とうまく連携するよう設計して、Linuxや各種UNIXといった競合製品にダメージを与えたとしている (3月13日の記事参照)。
Posted by sunouchi at February 13, 2003 11:53 AM