家の前の通りに止めた自転車のかごには、しばしばゴミが放り込まれる。
今朝はピンク色の四角い物が入っていた。アダルトビデオの外箱だった。どっからどう見ても一瞬でそれと分かる、白衣を身に着けていたりいなかったりする看護婦さんの写真がいっぱいのデザインだった。捨てた人のことを考えた。「・・そりゃ、こんなん持って帰るの恥ずかしいよね、家にこんなんあったら一発でバレるしね」。
で、何でこんな外箱なのか考えた。お店に並んでいる時の差別化くらいしか、思いつかなかった。だってこれと決めた後は、こんなに分かりやすい物を持って歩くの恥ずかしいでしょう?違うかなあ・・。だから、例えば外箱は二重にして、パッと見は普通のビデオテープにするとか、選ぶ時はプラケースに入ったサンプルで、実際手にするものは写真無しにするとか、考えてあげた方がいいんじゃないかな、なんて思った。
と思ってから、今考えるべきはどうやってこの箱を始末するかだったと思い出した。郵便受けに入っていたマンションの広告で箱を包み、近くのコンビニのゴミ箱に捨てた。朝日の下の白衣や裸体は、とても白々しくて嘘っぽかった。
そして昼、湿布を買いに行った薬局で、レジに大正製薬の軟膏のサンプルが山積みしてあるのを見つけた。「痛み・出血・はれ・かゆみに」と書いてあった。マラソンで作った足裏の怪我に良さそうだと思い、「これ、頂けるんですか?」と聞いたら二個くれた。家に帰って出してみると、箱の左上隅に、「痔の」(「痛み・出血・・」)と書いてあった。気付かなかった。
普通っぽい外観のアダルトビデオを、そうと知らず手にしてしまう誰かがいるかもしれない。あのド派手さは、「それでも観たいあなた」にだけ渡す為の、注意書きなのかもしれないと思った。