(雪に包まれたMasuleh。山の斜面にへばりつくように家が並ぶ。段々状になっているため、各家の屋根がその上に住む人にとって道となっていること)
いまは、Masuleh(マースーレー)という小さな村のそばのRasht(ラシュト)という町にいます。マースーレーに行くためにまずラシュトに一泊して、再びラシュトに戻ってきてもう一泊。
(いまいるRashtは、まさにカスピ海のすぐ隣。でも町からはちょっと距離があるようで、カスピ海はまだ見れてません。今後アルメニアあたりから、さらに地図がこみいるので、下に拡大地図を載せました)
マースーレーは、山の斜面に家が建つ美しい村ということで行ったのですが、これが予想以上にツーリスティな雰囲気で(土産物屋いっぱい)、しかもイスラムの休日である金曜日に行ったせいかイラン人観光客がとても多くて、いかにも観光で栄えている「村」という雰囲気満点でちょっとがっかり。でも、確かに雪山の中の独特な村できれいだったし、ホームスティのような宿もとても居心地がよく、のんびり散歩して人と話したりしてすごし、まるで日本の温泉宿に来たみたいな一日でした(温泉はないけれど)。
ラシュト、マースーレーに来てからも、人との出会いに恵まれています。イランに入ってからずーっとだけど、イラン人には予想以上に親切にされることが多くて本当にびっくりしてしまうほど!一日一日、イラン人の印象がうなぎのぼりに上がっています。
ラシュトからマースーレーまでの1時間ぐらいの道のりでは、乗り合いタクシーの運転手が全くタダでぼくらを現地まで運んでくれました。お金を払うと言っても「いいから、いいから!」といって決して受け取ろうとせず。外国人が珍しくて、ただ親切にしてあげたかった、というようなことを言っていましたが、それ以上全然強引なところもなく、笑顔で写真をとってメールアドレスを交換したぐらいでお別れという、本当に親切な人でした。最初、乗り合いタクシー乗り場で彼に会ったとき、彼だけ他の運転手に比べて随分安い値段で、「OK,OK」っていうので、何か裏があるのでは?って思い、また不敵な笑みを浮かべていてちょっと怪しげに見えたので、大丈夫かな?と思ったりしましたが(しかも途中、他の客が降りてぼくら二人だけになったとき、絶妙なタイミングで"Do you know Saddam Hussein?"とか聞かれたので、え?どういうこと??とビクリ。なんでそんなこと聞くんだろうと、Why, Why? と聞き返しまくってしまいました(笑)。そしたらまた「フフフ」と不敵な笑み)。
(彼がそのタクシードライバー。マースーレーについて、降りるとき。途中、いきなり拉致コースに入ったらどうしようかと、銃を突きつけられたときのシミュレーションとかまで軽くしてしまいましたが(笑)、絵に描いたような善人でした)
本当に何も要求せずに手を振って去っていったのは驚きで、疑って申し訳なかったな、って思った次第。
村を散策しているときには、家の中から日本語で呼びかけられ、「うちでお茶でも飲んでいく?」って言われたのでお言葉に甘えてお邪魔すると、彼は92~93年まで大阪で大工をやっていたという人物。そういえば、自分が高校ぐらいのとき、イラン人といえば上野でテレホンカード、っていう時代があったなあと思い出し、日本での話をいろいろと聞きました。
「私はパチンコが好きだったから、毎日ビール飲んで、パチンコやって……、日本は楽しかったなあ~」と彼。
当時、イラン人は成田で15日の観光ビザを取得でき、そのまま1年とか2年とか滞在して働くことが出来たとか。っていっても、それって不法滞在でしょ?見つかったらまずかったんじゃないの?と聞くと、
「全然問題ないよ、何も文句は言われない。15日のビザで1年いても、全然大丈夫だよ」
って言ってました。そんなわけないのでは……と思いつつ、それ以上突っ込んでも彼も日本語でちゃんとした説明はできそうになかったので分からなかったのですが、そういうのが当時は大目に見られていたのでしょうか。パスポート見せてもらっても、労働ビザとかもらっていた形跡はないし、出国のとき、それで問題になっていないのが不思議。他のイラン人でも、よく20年前は簡単に日本に行けたからよかったってよく言われるのですが、どうしてなのか、ご存知の方がいらしたら教えてもらえるとうれしいです!
彼は、日本では豚肉も食べたし、もうムスリムもなにもあったもんじゃねーって生活をしていたみたいです。いまは祈ってるのかって聞いたら、「まあ、ときどきね。毎日祈るのは古いシステム。いまはもうみんなそんなことはしないよ」と、前回書いたメガネ屋さんと同じことを言っていました。
彼もまた、「イラン政府は全くひどい。テレビでやってることも嘘ばっかりだよ」と。「アメリカが好きってわけじゃないけど、イランのシステムを変えてくれるんだったらうれしいな」と。アメリカの横暴さはひどいけど、イラン人の気持ちってのもまた複雑なんだなあと感じさせられます。
彼は、アヘンもやるし、酒も飲むし、祈らないしで、ムスリムの風上にもおけない気さくな笑える人物でしたが、決して彼が特殊ではないんだなあ、というのをだんだん感じてきています。
(夜はこんな風に。なんか山火事が起きてるみたいですが)
そのあと、晩飯を食べに小さな水タバコ屋さんにいくと、隣に座った夫婦の旦那が、テヘランの大手日系電機メーカーで働く人物。彼は英語がとてもうまかったので、日本人と一緒に働く上で感じる違いについて、イラン人の気質についてとかいろいろと話が弾みました。面白かったのは、彼が「日本人は白か黒のどちらかしかない、イラン人はその間に様々なグレーがある。そこに違いがあって、一緒に働くと難しいことがある」と言っていたのが印象的で面白かったです。日本人的には、それは一般に自分たちが欧米の人に感じることですよね?だから、そのような指摘をされるのがすごく意外に感じたのです。
イラン人のあまり押し付けがましくない親切心、きちっと仕事をする風であるところも含めて、イラン人って結構日本人に感覚近いのかな?って思ったり。ぼくらがイラン人に対して、とても居心地のよさを感じるのも、そのせいかもしれないと感じています。たった2週間ほど旅行しただけの感想なのでなんともいえませんが、とりあえずぼくはそんな印象を受けてます。
そして彼にもイスラム教の話を聞くと、彼もほとんど同じ答え。若者は全然祈ってなんかいないし、それどころかイランでは若者の薬物中毒が大問題だと。「酒はイランでは手に入れにくいけど、薬物はほしいと思ったらすぐに手に入るし、安いんです。だから、みな薬物に手を出してます。ぼくの妻も、ぼくにタバコを吸わせないように目を光らせてるけど、タバコをやめたら薬物に走るんじゃないかって心配してるんですよ、はははー」と。
確かに、前に泊めてもらったタクシー運転手も、「見つかったら終わりだよ」なんていいながら、食後にはずっとハシシを吸っていたし、上の大工さんもアヘンセットがキッチンの棚から、「はいっ」って感じで出てきました。見つかったら死刑とかとも聞いていたのに、イランでは薬物の普及率は本当に高そうな感触を受けています。
さて、その日系企業の彼と話しを終え、ぼくらが店を出る段階になると、
「支払いは私がします。初めてここに来たあなたたちに、どうかごちそうさせてください」と言われ、びっくり。そしてここでも結局お言葉に甘えることに……。イランにも日本のような社交辞令文化があるようなのですが、ここではみな本気で言ってくれているようでした(と判断しました)。
今日はこれから、ラシュトから5時間ぐらい先にあるアゼルバイジャンとの国境付近の町アルダビル(Ardabil)まで行きます。実はラシュトに来た日に夕食を食べたレストランであった家族に、「うちに泊まりにおいで!」と誘われ、とてもいい感じの人たちだったので、是非にと、お邪魔しに行くというわけです。あまり言葉は通じなそうでしたが、夫婦と娘さんの明るい人たちで楽しみです。
(グルジア、アルメニア、アゼルバイジャンは3つ合わせてコーカサス(カフカス)諸国と呼ばれますが、その拡大図です。今日はRashtからArdabilまでの移動。5時間ほど。明日、その少し西の町に移動し、そこからアルメニアに入ります。ちなみに、左の黒海の上の小さな黒枠内はなんだかわからなかったのですが、とりあえず湖っぽく塗っておきましたが、もしこれ、陸地だったりして間違いだったらご指摘ください!)
記憶がおぼろげですが、80年代末から92年ごろまで、日本とイランは相互ビザ免除協定を結んでいたはずです。ただもちろん滞在可能日数というのはあったはずで、それを超えて滞在し続け不法就労するイラン人が増えたため、日本政府が相互ビザ免除協定を打ち切った、ということだったんじゃないかと記憶していますが。
Posted by: 煙鬼 at February 10, 2008 11:27 PMまたまたステキな出会いが盛り沢山!
読んでいて
心があったまる出会いですね。
夜のラシュトの写真が
すごく幻想的でキレイ!!
>黒海の上の小さな黒枠
もう調べ済みかもですが、
そこはクリミア半島の東岸では?
湖どころか立派に黒海の一部です。
アルメニアは美人が多いとバックパッカーは口にしますが、
アルメニア在住の日本人いわく
「グルジアの方が多いと思う」とのことでした。
真偽を確かめてきて下さい。
>煙鬼さん
そうですか、相互ビザ免除協定があったっぽいんですね。イラン人が成田でポンッとスタンプもらって入国OKって、いまから考えるとなんか想像がつきませんが、日本もまだバブル前だったからですかね。
でも確かに、ああやって15日ビザで1、2年いられたら、法律も変わりそうですよね。出国の際に問題にされなかったってのもまたおかしな話ですが。
>ちえちゃん
イラン来てから本当に出会いがいいよ。こんな国、これまでなかったなあっていう印象。昨日もイラン人俳優の人の家に泊めてもらって、何から何まですべてお世話になってしまった。。次の町までのバスチケットまで買ってもらっちゃって、なんだか悪かったぐらい。
やっぱり人の印象が、その国の印象を最も強く残すから、こういうのはイラン全体にとって非常にいいことだなって思ったよ。
> さん
まだ調べてないんですが、それっぽいですね!となると、ここも黒海の一部になるんですか。ありがとうございます。確認してみますね。
ぼくも、グルジアには美人が多いって話はこれまで何度となく聞いてきたものの、アルメニアは最近聞きだしたところです。アルメニアの方が単に行ってる人が少ないから、ということかもしれませんが。。。こちらも確認しておきます!
Posted by: ゆうき at February 12, 2008 12:58 AM