November 27, 2007

キルギスタン!<Bishkek, Kyrgyzstan>

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(キルギスタンの初日を泊めてもらったアリの奥さんと娘さんたち。奥さんの民族衣装をプレゼントされた素子)

予定通り、23日に無事にキルギスタンに入国しました。
全くどんな国だったか予想していなかったキルギスタン、しょっぱなから展開が満載で、国境を越えてから密度の濃い数日を過ごしています。

話は23日から。

中国最後のカシュガルを朝8時に出て4時間ほどで国境に到着。そこまでは道もよくてとても順調。

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(中国・キルギスタンの国境イルケシュタン)

雪山が見える中にある寂しげな国境でしたが、キルギスタンへ国境越えを待つトラックがすごい列を成しています。荷物を背負ってその間をすり抜けて、中国側の出国審査場へ行くと、これが意外なぐらいのほほーんとした雰囲気。日本語を勉強中の国境職員が日本語のテキストを持って現れて、「発音が難しいんだよ、教えてくれよ」といい、一緒に「ぎゃ、ぎゅ、ぎょ」などを発声。「ぎゅ」がうまく言えず、「え?ぐ?ぎゅう?もう一回お願い」なんていいながら、不思議なぐらいさわやかに通過。

それから車でノーマンズランド(No Man's Land=国境のまさに両国の境目を成す地帯)を移動中に大きな展開。たまたま一緒になったキルギス人らしい男に英語で声を懸けられ、「オシュまで行くなら、おれが一緒に乗せていってやるよ。もちろん、タダで」と、うれしいお言葉。もともと国境から自分たちで車を探すしかないらしかったので面倒だなと思っていたので、とてもラッキー。しかも普通オシュまでは相場では一人25~30ドルぐらい。

その男は、ごつくて、ちょっと悪そう(でも優しげ)な感じのアリ。大丈夫かな、と少々不安はあったものの、話しているうちになかなか実直そうであると判断。アリは車のディーラーで、中国から車を輸入してウズベキスタンで売っているとのこと。彼はウズベキスタン系のキルギスタン人。で、中国からこの国境を越えてキルギスタンを通ってウズベキスタンへ車を運んでいる途中でした。その輸入中の中国製の新車5、6台にそれぞれドライバーをつけて、運転させてウズベキスタンまで移動させるので、その1台に乗ってっていいよということでした。(アリは英語がなかなか流暢で、基本的に何でも意思疎通可能)
キルギスタンの入国審査をすんなり終えて、2,3時間後に出発するから、と国境のそばでなにやらよく分からない商売をしているらしいキルギス人のコンテナの中でアリたちとともにひと休み。早速ローカルローカルした世界に入り込めて、いい感じ。

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(たくさん並ぶコンテナの一つにアリに連れられて入るところ)

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(コンテナの中。一番左がアリ。グレーのパーカーの若者を除く残り二人が飲んだくれオヤジ)

コンテナの中にはおっさんが何人かいて、ロシア語、キルギス語、ウズベキ語の世界。以前覚えたロシア語の単語などを思い出しながら、アリに通訳してもらって簡単な会話。

その中の一人のおじいちゃんは、ロシア・モンゴルでよく出会ったウォッカのアル中オヤジ。ぼくらが人民元をキルギスタンの通貨ソムに両替に行くと、もれなく一緒についてきて、まとまった現金を手にしたぼくらのソムで、ウォッカを一杯。もう、彼、たかるたかる。そしてコンテナに帰ってたらいにゲロ。その一方で、もう一人いたおっさんは、素子へ言葉のセクハラ攻撃。うーーん、ロシア影響下の国は、どこにいっても酔っ払いがかなりうざいです。

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(セクハラオヤジも、人柄はナイス、多分。。。)

……といいつつも、みんないい人たちで、パンやスープの食事を一緒に。食え食え、って感じで、ロシアもそうだったけれど、こうしてみんなで分け合うのがこちら流。食事も、お金も、ある人が出すっていうか。そう思うと、とても大らかでいい文化な気がします(中国もそういう感じでした)。

さて、2,3時間のはずが結局7時間ほどになり、真っ暗になってしかも雪が降り出してからオシュへのドライブがスタート。夜8時半出発。オシュまではすごい悪路でしかも10時間と聞いていたので、いくらタフそうなアリでも、これから10時間、つまり朝の6時までは無理じゃないかな……。ちなみにアリは、レスリング(パンクラス)の選手で、5年前はなんと旧ソ連圏でのチャンピオンだったとのこと。なので、スーパータフに違いないし、「これから10時間ぐらいなんともない」と笑うので、ま、ちょっとは安心したものの……

しかし走り出すと、真っ暗闇の中にものすごい吹雪で、全然前も見えない。その上道は"AKURO of AKURO"とも言えるほんとの悪路で、それにも関わらず無茶なスピードを出すので、ほとんどまともに座っていられない状態。30秒置きにお尻が数十センチは浮き上がり、疲労困憊。

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(4時間ほど走った先で。深夜12時半ごろ。ここから先は少し道がマシになるということでちょっと一息)

途中、素子は酔ってダウン、ぼくも疲労でぐったり。そしてタフ男を豪語していたアリも相当へばり、さすがに朝6時ごろには2時間ほどの睡眠休憩(しかも翌日、「実は二人が寝ている間、居眠り運転しちゃって危なかった」と告白……)。起きて朝8時すぎから走りだした後、風景は、田舎のロシアみたいに木造の家と木々がポツリポツリ、そこにヒツジの群れと羊飼いが道を横切って……。どこか懐かしいものでした。

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(最後の山で雪のためこの渋滞。いくつも車が雪の中にはまってしまっていた)

しかし道のりはまだ長く、その後さらに、山に激しく積もった雪に道を阻まれ、予定時間を大幅に過ぎた午後1時すぎにようやくオシュ着。ウランバートルを思い出す風景。でも、キルギスタンという未知の国にいることよりも、とにかく着いたという安堵感が大きく、あまり風景には思いを馳せられず。着いたころには、せっかくの新車も、雪、泥、石などで24時間前とは全く別の姿になっていて、新車という栄誉は返上せざるを得ない状態に。途中でワイパーもはずれたりしたものの、「これは中国製だからね」と笑うアリ。「大丈夫だ、これでも売れる」とアリは言っていたものの、さすがにどうかなと、日本スタンダードで考えてしまいました……。

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(「新車」の成れの果て。汚れだけならまだしも、石などによる傷がすごそう。あとで乗ってきたアリの友達も車の中でタバコの灰とか捨てまくってるし……)

そこから、泊めてもらうことになっていた、隣町カラスー(Kara-Suu)のアリの家へ。リッチそうな家に、奥さんと娘さんが2人。アリは26歳で、奥さんは23歳、そして子どもは5歳と1歳以下。きれいな家の素敵なキルギス人(でもウズベキ系)家族の家に初日から泊めてもらうことになりました。

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(アリの家から徒歩1分の国境の川。向こう岸はウズベキスタン)

ちなみに、カラスーはウズベキスタンとの国境にあり、アリの家から50mほど行くと川があり、その向こうはウズベキスタン。そんなわけで、カラスーもオシュもウズベキ人人口の方が多く、キルギス人、ウズベキ人の諍いも絶えないとか。アリに言わせれば、警察も、ウズベキ人には特に態度が悪く、狙って文句をつけられるとのこと。キルギスタンの警察はとても評判が悪く、何かというといちゃもんをつけて金をせびるまるでオフィシャルな強盗のような存在みたいです(アリの車は新車でナンバーがなかったため、警察がいるたびにとめられ、そのたびにちょっと小銭を渡して解決)。そんな話を聞いているうちに、だんだん、中央アジアが身近に感じられるようになってきます。

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(ウズベキ料理屋で食べたロシア料理。この料理なんと、ポテト、お米、粟(かな?)の3種の主食が一緒に盛られている。これをさらにパンと一緒に食べるという、主食三昧の食事。こういうのがこっちには多いです。日本の「ラーメン・餃子・半チャーハン」セットなんかを中国人が見たら、きっと同じことを思いそうですが)

カラスー到着後、アリと3人で遅い昼食を食べにウズベキ料理屋に行き、その後帰ったら奥さんが夕方のオヤツを用意してて待っててくれ、それを食べ終わると「さあ眠いでしょ、お休みなさい」とベッドルームに招かれ、ふかふかベッドで3時間ほど爆睡。9時ごろになって起きて、それから今度は夕食!すでに胃がもたれていたものの、さらにウズベキ料理のピラフを堪能。

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(夕食のピラフと、娘さんのグリラーノ。彼女がとってもおちゃめでかわいかった)

と、そんな感じで、ホスピタリティーが売りだと聞いていたキルギスタン、まさにその通りの大歓待を受けてスタートしました。翌日は奥さんに民族衣装やお土産をもらい、アリにはキルギスタンで使える携帯電話のカードまで買ってもらってから、首都ビシュケクに向けて送り出されました。

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(キルギスの民族衣装の次はムスリムの正装もやってみて、とノリノリの奥さんに衣装を出され、着てみる素子)

アリはスモークのかかったベンツに乗り、マーケットなどで降りると、いろんな人が丁寧に挨拶してきて、アリは「お、元気か」ってな感じで、町のドンみたいな印象。「おれの日本人の友達を助けてやってくれよ」と、次々に話をつけていきます。なんだかヤクザの子分になったような気分でした(笑)。

とても親切にしてもらい、25日の午後2時すぎに車にのって700キロほどある北の首都ビシュケクへ。この移動がまた11時間。夜中1時すぎに宿に到着。。。道は悪くなかったものの、やはり10時間クラスの移動は疲れます……。

ビシュケクでは、スタンプを押す場所がなくなったぼくのパスポートのページを増やしに日本大使館にいったり、ビザ取得計画を立てたり。いずれにしてもここの滞在はちょっと長くなりそうです。

最大でも1ヶ月ぐらいですが、その間にここでロシア語をある程度身につけるため学校に通おうと思っています。ちょうど昨日いい学校が見つかりました。きちっとした感じの学校で雰囲気もよし。しかも2人で授業を受けても、1人1時間3ドル程度と、かなり安そうでした(安いので先生の質は不明ですが)。

キルギスタンはとてもロシアっぽい雰囲気で、ほとんどの人がロシア語もわかるし、しかもこれから旧ソ連圏の国をいくつも行くことになるので、ロシア語がわかればかなり有効なはず。まさかロシア語をやるとは思っていませんでしたが、やはり言葉が分かると、旅の面白さ・深さはぐっと増すので、ちょっと頑張ろうと思います。

というわけで、短期間ですがキルギスタンに住むを気分を味わえそうです。

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(ビシュケクの町。首都らしいなかなかの都会。落ち着いた雰囲気。ベンツやアウディなどの外車がものすごく多いことに驚かされる。みな中古車っぽいけれど。キルギスタンも、ドル安の影響を受けてか、ここ数ヶ月で急激に物価が上がっている)


Posted by ykon at November 27, 2007 6:36 PM | トラックバック
コメント

おお。おつかれ。やっとつながったね。てゆうかいきなり楽しそうなキルギスライフを送れているようでよかったね!アリ、確かに見た目はちょっとこわいね。。

Posted by: Naoki at November 28, 2007 1:00 AM

はじめまして。ご親戚のJunkoさんからこのblog教えていただきました。ボクは最近、お隣のカザフスタンに行ってきました。もしAlmatyに立ち寄ることがあればご紹介したい人がいます。現地の大学の先生ですが、とても日本びいきの方で日本語を使いたがっていますので。下記はボクのカザフ日記です:http://blog.goo.ne.jp/geneve1992/3

Posted by: geneve at November 28, 2007 11:28 AM

脱中国、おめでとうございます。ロシア語を勉強とは・・。
イスラム圏は、ホスピタリティが高いですね。暖かいというか・・。近藤さんのようなdeepな旅はできませんが、トルコでも、イランでも、シリアでも分かちあいがしみついていてGDPの高い日本から行ったのに恥ずかしい思いをするほどでした。ヨルダンはちょっと厳しい感じを受けけど、時期的なものかもしれません。物価も高かった。
今回は、中国的雰囲気から離れ、懐かしいなあと思いました。(変な感想でゴメンなさい)

Posted by: omoko at November 28, 2007 11:30 PM

しばらくPCできる時間がなくて
久々に読むと
いろいろ展開があって
朝から大満足です。うふふ。
キルギスタンも楽しそう!
お二人のお陰で
また世界が広がりそう。

Posted by: Chie at November 29, 2007 8:06 AM

>naokiさん

キルギス、なかなかいい感じだよ。ビザもいらないし、物価もそこそこだし、アジアとロシアの中間って感じでちょっと新鮮だし。アリとの出会いは、しょっぱなからなかなかよかったよー。

>omokoさん

もともとロシア語をやるつもりなんてなかったのですが、ふと思いついて、そんな展開になりました。これから行く国を考えると、ロシア語が使える国が意外と広かったため、ちょっと分かれば旅ももっと面白くなるかな、って思って。ホスピタリティの高さは、イスラム圏全般でそうなんですか~。確かに日本のニュースなどから受ける印象と、実際のイスラムの雰囲気の差っていうのは結構感じますね。これからますます楽しみになってきます……。

>Chieちゃん

慣れ親しんだ中国を出たのはちょっと寂しかったりもするけど、新しい国に短期だけど滞在って形が取れそうなのはうれしい~。キルギスタンとかウズベキスタンとか全然イメージなかったし、今も、自分がキルギスタンにいるって意識があまりなく、なんか不思議な気分かも……。でも、キルギスタン、日本人はビザなしで3ヶ月もいられるし、居心地も悪くないし、旅先としてはマイナーなのにとても気軽にこれる国だよー。

Posted by: ゆうき・もとこ at November 29, 2007 8:14 PM

>geneveさん

はじめまして!コメントありがとうございました。サイトのリンクがあったせいか、すぐに表示されなかったみたいで気づくのがおくれてすみません。カザフスタンにいらしたんですね!私たちは、ウルムチでカザフスタンのビザを取ったものの、チベットなどをうろうろしているうちに入国しないままビザが切れてしまったこともあり(笑)、実はいくかどうか不明なんです……。でももしカザフにはいって、アルマティに行くことがあれば、是非ご紹介お願いします!その際はこちらからご連絡いたします。ではまた!

Posted by: ゆうき・もとこ at November 29, 2007 8:41 PM

キルギスタンの話、興味深く読ませていただきました。
旅のガイドブック(それも観光地案内というより、ちょっとマニアックなの)を読んでいるみたいで面白かったです。これからも楽しみにしてま~す。

その土地の言葉が話せると、旅の楽しさが増しますよね~。
日本語、英語、中国語、そしてロシア語。
マルチリンガルですね!!すごいっ。

私は英語を話す機会はほとんどなくなってしまったけど、また楽しみながら勉強したいなって思ってます。

私はここ10日ほど風邪でダウンしてました。辛かったぁ。。。
お二人も風邪には気をつけてくださいね!

Posted by: Rika2 at December 3, 2007 9:01 PM

>Rika2さん

ダラダラと書いてしまったけど、読んでもらえてうれしいです~。キルギスタンは自分たちも来るまで全然どんな国だかイメージできてなかったけれど、首都にしばらくいるとほんとに普通の街で、今度は逆にブログに何を書いたらいいか分からないって感じです。田舎の方にいればもっといろいろと新鮮なものがあるんだろうけど。都市にいると、良くも悪くも、どこでも一緒になってしまうよね。

でもその分、ロシア語の勉強生活がなかなか新鮮でいい感じです。1ヶ月だけと思うとなかなか気合も入るし、毎日ロシア語の勉強中心に動いてます。さすがにこの短期間じゃとても中途半端に終わりそうだけど。

中国語をやってから、語学を話せることの面白さを実感したって感じかなって思ってます。

風邪、10日ほどもダウンって結構つらそうだなあ~。ぼくらもこっちに来てから風邪引いたり、おなか壊したりってことが続いてます。何気にそれほど寒くなくて油断すると、急に寒い日が来たりするせいかも。。。東京の方が寒そうなきもするので、今後とも体には気をつけて!

Posted by: ゆうき・もとこ at December 4, 2007 8:25 PM

初めまして!突然のメールで申し訳ありません。
今、上海で働いている者です。キリギスタンについて情報をいただきたくコメントしました。実は今、一緒に生活をしているオーストラリア人の友達がロシア語に興味があり、オーストラリアに帰る前に中国からキリギスタンへ渡り、キリギスタンでロシア語を学ぶ(1-2か月の短期)予定を立てているのですが、ネットで探してもキリギスタンの情報が少なく途方に暮れています。もし、よろしければ通われた語学学校の情報(連絡先や名前、住所)をいただけませんでしょうか?また、事前にビザの申請などをしなくても行ってしまえば何とかビザをもらえるのでしょうか?また、宿を安く上げるためにホームスティをしたいらしいのですが、それは現地ですんなり探せるものでしょうか?また何か気を付けるべきことなどあれば教えていただければ幸いです。唐突な質問ばかりで申し訳ありません・・・よろしくお願いいたします!!!

Posted by: 佐々木 at June 2, 2011 10:36 PM
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