京都造形芸術大学にて、9月末から半期の半分で「旅行記」の講義を担当させていただきました。作家や編集者を目指す学生が集まる文芸表現学科の1年生への演習の授業。1回80分×2コマを7回、というものでした。それが先週で無事終了しました。
旅行記は、自分では書いているものの、じつはそれほど広く読んでいるわけではないので、去年、講義のお話をいただいたとき、これはやばいぞと、紀行文の古典と言われるものなども含めていろいろと読み始めました。しかし、読むのは遅いし、仕事で読まないといけないものに追われるしで、実際には数えるほどしか読了できず。
で、結局は、にわか勉強で読んだものの話をするより、自分が実際にいま書いているリアルタイムの話をした方が、学生にとってもためになるだろうし、話も臨場感が出て面白いだろう、と開き直って、講義を始めました。
学生は毎回20名ほどで(登録者が27名)、作家志望の人が多かったものの、ノンフィクションや紀行文に興味のある学生は少なそうでした。
「旅行記/エッセイ」という授業で、選択必修科目の一つなので、必ずしも旅行記を書きたい学生が集まるわけではない、どころか、紀行文に興味ある人はほとんどいなかったような按配でした。
でも、旅の話をすると、少なからぬ人が興味を持ってくれた感じでした。また、7回の中で3つ課題を出して、短い旅行記を書いてもらったのですが、みな思っていた以上にいい文章を書いてきてくれて、課題のチェックをするのもなかなか楽しかったです。
結局、紀行文を書こうといっても、まず旅に興味がないと、そんなもの書けるはずもないので、旅の面白さを話して、旅に行きたい!って思ってもらえるような授業にすることを目指しました。
その結果、少なくとも何人かは、旅に出たい!って気持ちをもってくれたようで、うれしかったです。
いまの若者は旅をしないってよく聞くけれど、今回講義をするなかで、まさにそれを実感しました。でもその一方で、みな、旅の話をすると興味を持って聞いてくれるし、知らないところにいくということ自体は、きっと誰もが興味があるはずだ、ってことも感じました。おそらくいまの学生たちは、旅に行きたいと思うきっかけがないだけなんじゃないかって。そのきっかけを与えられる講義になっていればと思います。
造形大の先生の一人が、「メディアなどから受け取る情報は、結局はすべて、買いなさい、買いなさい、ということにつながっていくことばかりだ」、とおっしゃっていて、そうだなって思いました。ほとんどすべてが購買欲を高めるための情報。
で、考えてみると「旅をしなさい」っていう情報(声)ってのはいま決して多くないし(むしろ「やめなさい」っていう声のほうが多いような。。)、それはもしかすると、「旅をしなさい」って言っても商売にならないからなんじゃないかな、って思ったりもしています。。そう思うと、学生たちが旅をしないのは、彼らが旅に興味ないからではなくて、結局、消費につながることばかりが席巻するいまの時代の流れなのかなと。そうであれば本当にもったいないっていうか、若者たちに旅に興味をもってもらえる機会を作らないといけないんじゃないかなって思いました。
自分のことなんてわかってるって思ってそうな若い人ほど、旅をしてほしいと思います。きっと、いかにわかってないか、ということがわかるから。人は比較対象を持ってみてはじめて、自分が何者かってことがわかってくるはずなのだから。
沢木耕太郎さんの『深夜特急』が若者を旅にかきたてたように、自分の本も少しでもそういう役割を果たせたらいいなと思います。
大学での講義は楽しく有意義でした。学生にもそう思ってもらえていたらいいのだけれど。
来年もまたいくつか講義を持たせていただく予定です。もっと書いて読んで勉強して、パワーアップさせないとな、と。