November 20, 2007

グゲ詳細<Kashgar No.3, China>

カシュガルも今日で早6日目、かな。正直ちょっと腰が重くなってしまってます。チベットを終えて疲れたということもあるし、また、まもなく勝手知って言葉も通じる中国も終わりで、これから次々と国が変化していくことを考えると、ワクワクする反面、新たなエネルギーがいるようで……。それとあとは宿。実はいま泊まってるところ、一人35元でこのクオリティは、他の追随を許さぬコストパフォーマンスの高さで、何気に"BPY(Best Perfomance Yado) 2007"を早々に受賞しかねない勢いです。ま、この価格になるまで宿の店員の「買収工作」もかすかに必要でしたが(笑)。でも、もうあと2日ぐらいでは出発するつもりです。

一昨日の関口さんの番組では、結局ほとんど映ることはありませんでしたが(って、そういうことを狙ってしまうぼくのようなミーハー野次馬連中が、制作者側にとっては本当にうざい存在なんだろうな、ということを撮影現場で実感しました(笑))、関口さんやスタッフの方とは中継の合間合間に結構お話でき、楽しく過ごせました。みなさん、ぼくらのことを覚えてくださっていて、関口さんも「あれ~?!なんでここにいるの~!?」ってびっくりしてました。まるで熱心な追っかけのように思われていたかもしれません。

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(番組終了後、裏道でスタッフみなが記念撮影。カシュガルのこんな場所に日本人がこんなに大勢いるのが不思議な光景。番組自体を考えても、先ほどまで、この場所を日本で数百万人の人が見ていたと思うと、なんだか不思議な世の中な気がしてきます)

気になるのは、通訳の陳さんに「上海でお二人のお友達に会いましたよー」と言われたこと!でも結局詳細は聞けずじまいで、全然誰のことだか分かりませんでした……。どういう展開でぼくらの友達って分かったんだろう??上海在住の方で、心当たりのある方がいらっしゃればお知らせください~。

さて、更新せぬまましばらく経ってしまいましたが、西チベットもう一つの大きな見どころ、グゲ遺跡。結局カイラスの方がインパクトが強かったため、いまとなっては少々印象が薄れ気味ですが、それでも人間の歴史のロマンと自然の不可思議さを堪能できる場所であったことは間違いありません。

以下、その詳細です。

6日、高山病がそこそこ治ったというちょっと不安の残る状態でアリを出発。このときは、もうカイラスはいかなくてもいいかなー、とりあえずグゲだけでも、なんてあまちゃんなことを言っていたのですが、そのときの気持ちとしてはグゲ行くだけでも精一杯なんじゃないかと、弱気なぼくら。昼ごろ発のグゲ行きバスに乗るためにバス停に行くと、なんとそこにはイスラエル人のぽっちゃりくんが!あれ、一昨日のバスですでにグゲに向ったのでは?と聞くと、彼はヒッチハイクで行くことを狙った挙句、一台も車が通らず撃沈したとのこと。うーーん、やっぱりイメージどおり運が悪そう。前回書いたように、その後、彼がコンバット部隊のタフガイということが判明するのですが、とりあえずこの場は、心強い旅の道連れを得てちょっと気楽に。車内にはもう一人フランス人の年配の女性(前回登場の人物)もいて、12時半にバス発車。

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(崖沿いにわずかに見える細い道を通っていく)

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(頂上らしきところにはチベタンたちが積んだ石が並ぶ。遠く後ろにはヒマラヤとおぼしき山も見える)

途中5000mを越えるらしいというので(まだ5000mという言葉に拒絶反応を示していたぼくらは)どうなることかと思っていたものの、体調的には変化なく、最高地点も無事クリア。でも、道はかなり険しい。途中、バスを降りて歩いてくれと言われたので、その通りにして遠めにバスを眺めていると、過激な坂の途中のヘアピンカーブで何度か切り返して、砂煙を上げている。えっ、谷に落ちちゃうのでは?とヒヤリとしながら見ていると、なんとかクリア。そして再乗車。聞くとここで去年、やはり一台バスが落ちたとのこと(3人乗っていて、2人死亡、1人脊髄損傷(だったかな?))。それでここだけみな降りるようになったとか。。。うーーん、道の整備を急いでもらいたいところ。でもこんな僻地にアスファルト運んでっていうのは本当に大変なんだろうな……。

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(バスを降り、最難関のカーブを一人がんばって越える運転手を見守る。下の崖の途中には、落ちたのかどうしたのか車が一台……)

最後はグランドキャニオンの中を走るような状況になり、そして夜8時ごろ、なんとか安全にグゲの近くの村、ツァンダ着。グゲまで20キロほどの小さな村。この辺はチベット自治区とは行っても、商売のためにやってきている漢族が多く、雰囲気はあまりチベチベしてない。でもしかし、なぜこんな人が住んでいることすら不思議な場所に商売をしに来るのかかなりびっくりだったけれど、夏は観光客でそれなりに賑わうらしいことを食堂のお姉さんが言っていた。いまはもう時期が遅かったため、多くの商売人たちは店をたたんで帰ってしまっていました。

翌朝、4人で車を借りてグゲ遺跡に。とはいえ運転手が道を知らず「この道であってる?」とぼくらに聞きはじめる始末。遺跡までの間も、グランドキャニオンの中の悪路をぐんぐん進む感じで、また周囲に見える土山、そしてその後ろの雪山(これはすでにインドで、山はヒマラヤとのこと)とのコントラストが見事でした。正直、遺跡自体よりも、その周囲の方がすごかったような。

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(遺跡のメインの部分)

グゲ遺跡は、10世紀から16世紀まで存在していたグゲ王国の跡地。こんな僻地に国の中心があったことがまず驚きです。もっとも1000年も前は、インド・中国の国境もなかったはずで、地理的条件もまた異なったのだろうと思われますが。

全体的に土の要塞みたいで、遺跡としての雰囲気は抜群。シーズンオフで全然人がいなかったのもまたよかったです。いまはひっそりとしている土の建物それぞれの中で、むかし人が暮らし、賑やかな王国の生活をしていたと思うと、とても不思議な気がしました。この穴で、人が食事をし、寝て、働いた……。そういう時代を超えたロマンが遺跡にはありますね。小さな洞窟に入ってそんなことを考えながらシャッターを押していると、ふと当時の人々の息遣いが聞こえてきそうな気がすることもありました。

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(手前が土の建物群を上から見たところ。それにしてもその奥に見える土山の風景がすごいです)

いくつかあるお寺の建物はそれなりに保存されていて中に入ることができますが、中の仏像や壁画は、文化大革命のときの破壊の跡がナマナマしく残り、無残な形になっているものも多かったです。ものを破壊するのは、造るほどにエネルギーは必要ではないはずですが、30数年前、おそらく道も何もなかっただろうこの僻地まで仏像や寺院を破壊するためにやってきた中国人のエネルギーは、ただごとではないような気がしました。寺院内は撮影禁止。

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(壁の感じなどとても雰囲気がある)

ちなみに、グゲ遺跡、入り口から上まで登るのは1時間以上は歩かなければなりませんが、もっともスタスタいくのは、フランス人のおば(あ)ちゃん。ぼくら二人とぽっちゃりコンバットは、途中で休憩。ユダヤ教についていろいろと学習。ぼくらがユダヤ教についてあまり知らないのをおそらくぽっちゃりくんは驚いていたかもしれませんが、その一方で彼も、「日本は民主化しているのか?自由はあるのか?」という感じで、お互い他国に対しては知らないことがいっぱいだなあと感じさせられます。

さて、グゲでもっとも印象に残ったのは、やはり前に書いた骨とミイラの洞窟でした。遺跡の寺の中とかは案内人にカギをあけてもらって一つひとつ入るのですが、ミイラの穴だけは「あの辺にあるから自分たちで行ってくれ」と。

というわけで大体の場所を教えてもらって自分たちで探すことに。途中で、朝この遺跡まで連れてきてくれた運転手も参加。ここまでの道を知らなかっただけあり「おれもグゲ遺跡見たことないんだよ、一緒にいくよー」と。彼は岸部一徳に似てるだけかと思ったら、「プリズンブレイク」のマホーンにもそっくり(っていっても、ぼくらの中でホットなだけでマイナーな人物ですが(笑))。油断のならない好人物でした。そんなわけで5人でミイラ探し。途中全くあさってな方向を目指してしまい、1、2時間は余計に歩き、ぼくらは激しく疲労するも、フランス人のおば(あ)ちゃんだけが元気。

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(ミイラの穴を探し出して1時間ぐらいしたころ。手前がおば(あ)ちゃん。右がマホーン。左奥でなんだかポーズとってるのがぽっちゃりコンバット)

あらゆる場所を探しつくし、あとはもとの場所に戻るしかない、となったところで、マホーンが「これじゃないか?」と一言。そこには、地上から3メートルほどの高さにある穴が。マホーンのお尻をぼくが押し、彼が中を覗くと、「お、やっぱりここだよ……」と、少しヒヤリとした様子で、こちらを向きました。

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(これ!ちょっと高いところにあるため、この横を歩くと普通は気づかない。でかしたマホーン!しかしなぜこんなところに人の死体を放り込んだのか……。隠すためだったのかな……などといろいろ想像してしまいます)

そしてその次にぼくも入ってみました……。かがまないと進めないほどの大きさで、奥行きは奥の部屋をあわせて7,8メートルといったところか。かなり狭く感じました。少し奥に足を踏み入れるや否や、「バリッ」と骨の砕ける音。見るとそこらじゅうに足の骨、腰骨、肋骨、髪の毛、衣服などがちらばっていました。

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(四つんばいになって入っていた奥の部屋。まるでインディ・ジョーンズの世界)

詳しくはわかりませんが、どうもグゲ王国が滅ぼされたときに殺された人たちの死体の残りだとか。でも頭蓋骨だけはどこかに持ち去られたのか、一つもありません。こないだ1000年前とか書きましたが、王国滅亡時の死体となると300年ほど前ということになるのでしょうか。そしてよく見ると、ミイラ状になった足が……。思わず手で持ち上げてしまいましたが、感触としては、カプチーノを注文するとたまに付いてくるシナモンでできたかき混ぜ棒を少しやわらかくしたような感じでした……。何百年も前に殺された人の足だということを思うと、気が遠くなりそうな、意識が遠のきそうな、得たいの知れない感覚に襲われました。

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(これが、手前の部屋にあった足のミイラ。非常に生々しい)

人骨と分かっているのに全く供養もされずに放置され、しかも、普通に人が入っていけてそのたびに骨が砕け散るような環境はおそらくここ以外にはないかもしれません……。死臭もかなり強く、その後服や体からその臭いがとれず、宿に帰って服は全て洗いました。おば(あ)ちゃんは穴には入らず、ぽっちゃりコンバットは、入ったものの「今日は悪夢を見そうだ~!」と興奮していました。

グゲはそんなところです。このあと宿に戻って、気を取り直してカイラスへ行く方法を練ると、カイラスまで行きたがっている運転手が見つかり、交渉の末、そこそこの値段で翌日行けることに。そしていよいよカイラス……。その後の話は、こないだ書いた通りです。


Posted by ykon at November 20, 2007 9:05 PM | トラックバック
コメント

陳さんの「お友達」というのは、私でした!「先日NHKの中国鉄道大紀行(関口智宏が旅人の)で通訳をしている、陳さんという方にお会いしました。1週間休みがあり、ちょうど上海に戻ってられるところでした。そこで、以前ジャピオンで北九州の記事を書いてらっしゃった方の話になり、今またご夫婦で中国大陸を旅されいるようです。彼らとNHKの中継隊が承徳で会われたそうで、次回の放送分で出演するかもしれない(本当に出るかどうかは確定できませんが)、とおっしゃっていました。意外なところで思いがけない方の話題で、面白いです。」と私の友人のKさんから。

Posted by: omoko at November 20, 2007 10:13 PM

上のメールは10月24日に受信しました。このサイトに送信不可だったもので・・・。でも送信のコツがわかりました!!

Posted by: omoko at November 20, 2007 10:15 PM

>omokoさん

早速、思いがけない情報をありがとうございます!つまり、omokoさんのお友達のKさんが陳さんに会われたということですか?Kさんというのは、ぼくも存じ上げている方でしょうか?そんなところでジャピオン北九州特集の話が出ているとは、なんか面白いですね~。縁というのは不思議なものですね!

Posted by: ゆうき・もとこ at November 21, 2007 12:04 AM

Kさんは、昨年北九州フェアの時、大勢の中でご紹介しました。そのとき雲南が大好きです・・と言われていました。
 観光課のAさんとも時々近藤さんのお名前が出て、このブログの話がでますよ。北九州からの応援していますからね!
 ところで私、旅行業も始めることにしました。持続的にあの企画を実行するためには、これまでのように手出しでは限界があります。経費なりとも稼いでいかねばと、丁度共同経営者も見つかったので、その会社を借りて営業許可を取る予定です。遠い道のりですが、一歩ずつ前進するばかりです。
 私は旅行は沢山したので概観は想像つくのですが、個人旅行の大変さは、また数段!お二人も健康に留意しながらやれるだけのことはやってください、体力との戦いという面もありますね。日本から出来ることがあればご連絡下さい。

Posted by: omoko at November 21, 2007 12:40 PM

>omokoさん

Kさんはあのときの方だったんですね。そこから陳さんを通じてつながるなんて、なんだか不思議なご縁ですよね。去年以来、ぼくにとっても北九州はほんとに身近な街になってます。カシュガルでも、北九州に住んでた&住んでる大学生二人に会い(一人は、イギリス留学のからの帰り道を、イギリスから自転車ではるばる九州まで戻っている途中でした!)、去年のことを思い出しながら北九州話をしましたよ。Aさんにもどうぞよろしくお伝えください!

旅行業を始められるとのこと、素晴らしいです!確かにあれだけのことされるのであれば、ちゃんとビジネスの形にしないと継続するのは難しいですよね。ますます上海と北九州が密接な関係になっていきそうですねー。遠くからですが応援してます。がんばってください!

Posted by: ゆうき・もとこ at November 22, 2007 12:39 AM

すごいですね^^。  とても素敵です。 ワクワクどきどき追記を楽しみにしています。 陳さんどこの陳さんですか?会った事があるかも??

Posted by: kenken at November 22, 2007 3:42 AM

>kenkenさん

こんにちは!陳さんは、NHKの番組で関口知宏さんの通訳をやっている陳さんですが、それ以外の情報はあまり知りません……。でも上海出身なんですかね、上記の情報を考えると。写真は、このブログの9月30日のものに載っています。知り合いだったら奇遇ですね!

Posted by: ゆうき・もとこ at November 23, 2007 1:23 AM
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