October 23, 2006

吉林省旅行の続き5 <あるおじさんとの出会い、そしてやっと昼休みが終わって……>

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(北朝鮮、ロシア、中国の三国の接点が見える展望台からみた北朝鮮。川の向こうが北朝鮮です。ちなみに、これは中国側から撮ったもので、最近の北朝鮮訪問記とは関係ありません。その前日の写真。)

(前回は、中国側に戻ろうとしたのに国境の橋が昼休みで閉まってしまい、北朝鮮側から出られなくなって途方にくれたところまで。そして、ガックリして北朝鮮の入国審査の建物ところまで戻ると、なんとネイティブの日本語で話しかけられたんです――。)

「あなたたち日本人? どうしてこんなところにいるの?」

その日本語を聞いて、その人物が日本人であろうことを確信して、ぼくらもまたびっくり。どうしてこんなところに日本人がいるのだろう、と。。。しかしまず、自分たちの状況を説明する。

――北朝鮮をちょっとだけ見てみたいって中国側で頼んだら、いいよ、って入れてくれたんです。で、ちょっとだけ見て帰ろうと思ったら、なんと国境が閉まってしまって……」

「え? 招聘状とか何か持ってるの? そういうのなしでどうやって中国側を出国できたの?」

――招聘状? やっぱりそういうのいるんですか……? もちろん何もそういうものは持ってないんですけど、いろいろと交渉したら、なんだかんだで通してくれて、橋渡ってここまで来ることができちゃったんです。

「えっ? そうなの? なしでここまで来れるのか……。それは知らなかったよ。びっくりしたなあ。いやあ、橋の前でうろうろしてるあなたたちを見て、なんか様子がおかしいから、なんだろうなって思ってたんですよ。そしたらこっちに戻ってくるし、日本人だっていうから、ほんとにびっくりしたよ。まさか旅行者がこんなところまで入ってくるなんて思わなかったから……それに、昨日北朝鮮が核実験をやるって宣言したんだよ、知ってた? もうそれで日本もどこも大騒ぎですよ」

え?そうなんですか!? そう、このとき初めて、核実験のことを知ったんです。まさかこのタイミングで、そんなことになっていたとは……。全く知らずにびっくりでした。


――でもところで、どうしてこちらにいらっしゃるのですか?
と今度はおじさんに聞いてみました。

「私は在日なんですよ。日本で育ったけど、もともとはこっちの出身でね。今は仕事でよくこっちに来てて、もう北朝鮮には50回以上来てるんですよ。今回も仕事で中国から北朝鮮に入ってきたんだけど、橋渡ってから、いまは昼休みだから2時間待てって、ちょっとひどいですよねえ」

……と、そんな話をしている間に、ぼくの携帯の着信音が鳴りました。メールだな、と思ってぼくが携帯を取り出そうとすると、おじさんはびっくりした顔をして、

「今のは、携帯?? それはまずいよ!携帯は持ち込み禁止だからね。携帯持ってたらほんとは中国側で預かってもらってから入国しないといけないんだよ。見つかったらまずいから、すぐに電源切って!」

そう言われてぼくは初めて、ちょっと甘く考えていたかな、という気持ちがわきあがってきました。それまで隠れて写真も撮っていたけれど、見つかったら本当にまずかったかもしれないな……と思い、急いで携帯のメールをチェックしてから(メールは、北朝鮮に入らずに先に次の目的地である延吉に向かっていた友人から。ここでメールもらってなかったら電源切ってなかったはずで、もっとまずい場面で携帯が鳴ってたかも。。maikoちゃん、ありがとう!)、電源を切りました。じゃ、もちろん、写真もまずいですよね、と聞くと、

「カメラも隠しといた方がいいよ」
とおじさん。とはいえ大きな一眼レフのため、隠すのは無理なので、とりあえずCFカードを抜き取り、空のCFカードに入れ替えておきました。こういうのはやっぱり緊張が走ります。

そこまですると、もうあとは国境があくのを待つしかないと腰を据え、それに、このおじさんとの出会いは貴重なので、いろいろと話を聞き始めました。

特に印象的だった話は、北朝鮮の入国の際に必要なものについて(招聘状など)のこと、彼は北朝鮮のパスポートを持っているのにもかかわらず、これまで監視人なしでは北朝鮮に入れなかったということ、でも最近やっと、在留許可証(だったかな?)を手に入れて、それでやっと監視人なしである程度自由に動けることができるようになったとのこと、弟さんが北朝鮮に住んでいること、などなど。。。

「弟が北朝鮮に住んでるんですよ。もうかなり前に向こうに行ったんだけど、あのころは北朝鮮っていうのは、ある意味『理想の国』って思われててね。そして実際にそう言える側面もあったんです。弟には、私がこっちに来るときに少しお金を持っていったりしているので、それなりに不自由なくやっているようですよ」

それからぼくらの仕事のことなども含め、ま、いろいろと話したわけです。でも、実際2時間も話していた割には、いま素子とともに思い出そうとしても、それほど思い浮かばないのは、もしかしたら二人ともその状況に緊張してしまってたからかな、とも思ったり……。

でもいずれにしても、2時間ほど話すと、そろそろ国境が開くはずの1時半(北朝鮮側は2時半)に。これで北朝鮮側への本当の入国に向けても交渉ができるかもしれないのですが、そのときにはもう二人の頭の中は、とにかく中国に戻ることばっかり。さらに奥に入ろうなんていう考えはすでに全くなくなっていました。

「いやあ、やっと開くね。大丈夫だと思うけど、無事に中国側に戻れるといいね。じゃ、元気でね。また何か分からないことあったら連絡くださいよ」

といって、おじさんと別れ、ぼくらは国境の橋に再び向いました。確かに橋の小さな門は開いている。晴れ晴れした気持ち(まだ少々不安もあったけど……)で橋に向かって歩きながら、その周囲を見て、写真に撮れないこの景色をずっと記憶に焼き付けておかないとって思いました。
川沿いにはきれいに整った畑がある。数百万人が餓死しているというようなニュースの内容が全くイメージできないほど青々とした野菜がそこに育っているのが印象的でした。そして、国境だからあえてきれいにしてあるのかな、とかいろいろと思ったり。

「子どもたちが歩いてるよ!」

と素子が言うのと同時ぐらいに、その畑のそばを集団で歩く子どもたちの姿が見えました。赤や青や白などきれいな服装をした彼らは、お互いになにかふざけあいながら元気に楽しそうに歩いていて、これまたイメージする北朝鮮とは異なる風景。北朝鮮に対してあまりに、色で言えばグレーっぽいイメージを持っていたからということや、自分たちがもう戻れると思って気持ちが楽になっていたから、そういう風に見えたということもあったかもしれません。

いずれにしても、結局、「実際に北朝鮮を見た」と思えたのは、この風景だけだね、って話ながら、ぼくらは橋へと向かったんです。そして、また例のさわやかくんが橋で待っててくれるんだろうと、期待して近づいたのですが、いた守衛さんは別の人物。言葉通じないし、状況を説明するが面倒だな、と思いながらも、彼に「北朝鮮に入国できなかったので、中国に戻ります」と中国語で言うと、その内容が分かったのかどうかは不明ですが、とにかく、手を横に振り、

「不行(ダメだ)」

という。え?中国に戻るんだよ、いいでしょう?
と言っても、やはりだめ。どうも出国にための書類がいるというんです……。え、マジ??? 予想もしていなかった展開にこれまたガックリ。。。でもそういえば、こっちに来るときに北朝鮮側から中国側へ橋を渡ったトラックが何か紙をここで渡していたような。。。自分たちも、それがいるみたいだ。。。ちょっと粘ってみたものの、もうこれは全く交渉の余地がなさそうで、本当にガックリしながらまた橋から離れ、出入国審査の場所へと戻っていきました。さて、この面倒な状況で、言葉もあまり通じなそうなのに、ちゃんとそんな書類がもらえるのだろうか……。

そうだ、頼めるのは、あのおじさんしかいない!おじさんが入国しちゃう前に捕まえて助けてもらわないと!

そう思って二人で走って再びあの建物の中へと駆け込んでいきました――。

では、今回はここまで。随分と長くなってしまってますが、次回で多分完結します!

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(上の写真同様、展望台からみた北朝鮮。繰り返しになりますが、これも中国側から撮ったもので、最近の北朝鮮訪問記とは関係ありません)


Posted by ykon at October 23, 2006 1:37 AM | トラックバック
コメント

近藤くんへ

政権が変わったりとか、北朝鮮の核実験とかで忙しくしていて、久しぶりにブログを見てみたら、北朝鮮に入国とは。びっくりしつつ、なんか羨ましい。これは、かなりアツイね。

僕は来年5月ぐらいには日本に帰りますが、どっかでまた会いましょう。健康には気を付けつつ、充実した、非日常的な生活を満喫してください。

ちなみに、現在ワシントンDCでプレス担当してます。

中井より

Posted by: なかい at October 23, 2006 11:47 AM

この後おじさんには会えたのかっ??
最終回が気になります・・・
一人でやきもきするのがイヤで
最近ゆうきさんのブログ見てる~?
って、弟巻き込もうとしたら、
オレなら絶っっっ対ムリ!との返事。
ちゃんと見てやきもきしてました。

Posted by: Chie at October 23, 2006 3:26 PM

>中井へ

おお~、久しぶり!元気そうだね。中井のブログ、確か随分と更新されてなかったから、どうしてるかな、とたまに思っていました。そうか、来年日本に帰るんだね。確か同じころに日本でたよね?だから、もう来年には4年ぐらいになるのかな?

北朝鮮訪問は、ま、アツいっていうか、なんていうか(笑)。。。結局ほとんど何も見ていないわけだけど、とりあえずいろいろと感じることはあって、それなりに貴重な経験だったなとは思ってます。

おれたちはまだいつ帰国するかはわからないけど、今年はちょくちょく用事があって日本に帰ってます。やっぱり上海は近い。また、会おう!

>Chieちゃん

おじさんには……、ま、次回のお楽しみ(笑)。次回ぐらいで終わりにしないと、そろそろダレてきそう、と感じてます。ゆうきくんもいつも見ててくれてうれしいです。いやあ、来月ライブでゆうきくんに会えるのも楽しみ♪

Posted by: こん at October 23, 2006 6:01 PM
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