October 17, 2006

吉林省旅行の続き4 <北朝鮮側へ>

なかなか先に進まずにすみません。最近仕事に追われ、ちょっと更新の余裕がなくて。。。

ところで、この何回かを読んでもらった方からいろいろとコメントをいただいていますが(ブログ上のみでなく私的なメールも含めて)、それを読んだ上で、念のために一つ確認しておきます。

入国したのは、北朝鮮が核実験実施宣言をした翌日の4日のこと。で、ぼくらはこの宣言のことは全く知らずに入国を試みています。なので、気持ち的には、いま世界中が持っているような北朝鮮に対する緊迫感はありませんでした(普通に、これまで北朝鮮に対して持っていたイメージだけで)。その上で、一応、大丈夫かどうかを確認した上での訪問ということで(ま、実際の入国の際にいろいろと強引な交渉をしてはいるのですが)、それほど無謀に何も考えずにただ突っ込んでいった、というわけではないんです(北朝鮮というだけで、行こうとするのはすでに無謀だ、という見方ももちろんあるとは思いますが)。核実験のことを知っていたら、まず入国など試みなかったと思います。

核実験のことがあっていまにわかに北朝鮮が一時期のイラク的な存在になりつつあるように思いますが、ぼくらが行ったときは、そういうイメージをもちつつ行ったわけではないということだけ、念のため再度書いておこうかと。というのは、今回のことで少々ご心配をかけてしまっている向きもあるので、どこにでもふらふらと行ってしまう「無謀夫婦」という名をほしいままにしてしまわないためにも、一応ここに記しておきます。

と、前置きだけで終わってしまうのでよくないので、先に進みます。

さて、前回は橋を渡りきったところまで。さわやかくんの一世一代の大決断のおかげでぼくらはようやく北朝鮮の大地を踏むことになったわけですが、そのときは、こんなに連続で、よく分からない説得が通じてしまってることに、「今日、ついてるな!」って思ったり、「実はこれがすごい悪運なんじゃないか」と思ったり。

まあ、いずれにしても、さっと見て30分で(中国側ゲートが閉まる12時までに)帰ろうと思っていたのは確かで、ずんずんと中央に向かって歩いていきました。

目の前にある建物が明らかに出入国審査の場所。あまりひと気のしない、その中を入り口から覗いてみると、薄汚れた窓の向こうにうっすらと見える金正日、金日成二人の笑顔の肖像画。「おお、いよいよ来たな」と、気分も高揚しようというものです。

横の扉から中に入る。すると、入国審査の窓口があり、その後ろにも金正日が笑っているものの、職員はゼロ。いるのは、入国を待つ中国人が数人。彼らに、どうなってるの?聞いてみると、「昼休みだから、あと2時間待てって」ってことでした。

審査の場所には誰もいない。しかも、向こう側まで開けっ放し。。。勝手に行っても誰も気にしないんじゃないかという雰囲気に思わずちょっと先まで覗いてしまう。すると、中国人が確か「いっちゃえいっちゃえ」的な手振りをしたような。。。ぼくは、「へへ、さすがにそれはまずいよ」というような顔を返したものの、ほんとにいけてしまいそうな様子に、内心ちょっと惹かれていたり。

スタスタスタ――。
と、そこで、中年の職員さんが一人登場。彼も、自分が持っていた北朝鮮へのハードコア&融通の利かないイメージを裏切る穏やかそうな人物。中国語は通じてないものの、とにかく中国語+ジェスチャーで、「ちょっと観光に来たんだけど、向こう側に通してもらえませんか」といったニュアンスを伝える。すると、

「不行(ブ・シン)。だめだ」

と、さわやかくんと同様の反応。しかし、親切にも「隣の部屋で待ちなさい」とソファのある部屋で待ってるようにぼくらを他の部屋に案内してくれました。で、たどり着いたのが、さっき外から覗いた、大きな肖像画の部屋。そこのソファにぼくらを座らせて、中年職員は出て行きました。

IMG_5593.jpg
(その、金親子の肖像画。鮮やかな赤が印象的)

誰もいないようなので、
「写真撮っても大丈夫かな?」
とさっと、カメラを出して、肖像画や部屋の様子を撮影。しかし、すぐカバンにカメラを戻せる態勢で何枚か撮ってると、足音がしたので、それにかなりビビッてちゃっちゃっとカメラをしまいました。かなりドキドキ。しかし、誰も現れず……。ビビリすぎ(ぐらいがよかったのかもしれません)。

IMG_5595.jpg
(同じくその部屋で撮影したもの。上、何が書いてあるのか、分かる方がいらしたら教えてください!)

「もう無理だね、帰ろう。さすがに二時間も待てないし。ゲートもそろそろ閉まっちゃうしね」

そのとき11時45分ごろ。まだ閉まるまで15分あるから余裕だと思い、来られるところまで来たのでとりあえず諦めがつき(2時間待てば新たな展開があるかもしれなかったものの、町からこの国境まで連れてきてくれた運転手を、1時間で戻るっていって中国側に待たせてあったので、2時間待つという選択肢はもともとありませんでした)、建物を出て、周囲に拡がる牧歌的な風景を眺めたり、地面に落ちている石を拾ってみたりしながら、また、再びさわやかくんのいる橋のはしっこに戻っていきました。

しかし。。。

橋に近づいて、茶と緑の風景から目を離し、正面の橋を見ると、なんと北朝鮮側のゲートが閉まってるじゃないか!!「ありえねー!」と思ってしまったものの、冷静に考えると非常にありうる展開だったわけです。中国側が閉まるのだから、北朝鮮側も閉まる、それに中国側の橋の前の守衛の少年君が、確か「北朝鮮側はいつ閉まるか分からない」って言っていた。だから、ぼくらは自分で見てくるっていって、こっちにやってきたんでした、もとをただせば。。。

しかし、そんなことはすっかり頭から消えていて、これはやばいかも、ととにかく焦り始めました。でもよく事情を知っていて、しかも融通の利くさわやかくんがまた笑顔で通してくれるだろうと、不安を押し消し小さな期待を膨らませて彼に近づいていくと、まだ距離があるうちから、

「不行(ブ・シン) だめだ」

といった感じで手をふるのが見える!!急いで近づいて、彼に、「やはり入国できなかった、中国に戻るから橋渡らせてくれ」と伝えると、彼はあの融通の利かせっぷりを完全に忘れたかのように、

「不行」

を連発。だめだ、だめだ、だめだ―――と。そして、ぼくが彼に近づき、彼の立っている、ちょっとだけ周囲より高くなってコンクリートに舗装されている部分に気づかずに立っていると、彼が

「そこから降りろ」

と、マジ顔でいうではないですか!さっきまでのさわやかな雰囲気は激減して、ぼくらは「え?どうしちゃったんだよ、お前、めー覚ませ!」って気持ちでした。しかし、現実に目をむけ、今戻れるという妄想を捨てて、目を覚まさないといけないのは、完全にぼくらの方でした。元さわやかくんがまた促す、

「向こうに戻って待ってなさい」

と。もう交渉は全く通じそうになく、確かにそれ以外どうしようもない……。これはまさか、かなりまずい展開なんじゃないか、と二人とも血の気が引き、そうして、また金正日の待つ、入国審査の建物に向かって戻っていきました(冷静に考えると、昼休みで扉が閉まってるだけなんですが)。そのとき確かに、全ての風景がグレーがかって見えたような、そんな気がします。そして、中国側で待っている運転手の顔や、先に別の町に向かった友人の顔が頭に浮かんで……どうしよう!?しかし、ここでまた意外な展開が。二人してがっくりと肩を落とし、とぼとぼと建物に近づいたところで、すぐにぼくらに声がかかったんです。

「あなたたち、日本人? なんでこんなところにいるの?!」

それもネイティブの日本語で。声の主は、中年の、いや、初老のといった感じのおじさん。そしてもちろんぼくもすぐに思いました。あなたは誰なのか、と――。


では、今回はここまでで。なんか、あえてもったいぶってるような終わらせ方になってしまいましたが、とりあえずまた次回!

ではまた!



Posted by ykon at October 17, 2006 3:54 PM | トラックバック
コメント

ヴーーーー(*>ω 今晩眠れそうにありません・・・。

Posted by: Chie at October 18, 2006 3:27 PM

ハングルの意味はおそらく「全軍の威力で社会主義の強盛大国を建設して、新しい○○を成し遂げよう」みたいな感じかと思います。

Posted by: asai at October 19, 2006 7:51 AM

いやー、次が気になりますねー

キル君に見せたところ、案の定すごく心配してました。
中国語に訳してもらったところ、
先軍!為力在社会主義強成大国、再作一ケ新的飛躍。
こんな感じだそうです。

Posted by: zono at October 19, 2006 6:32 PM

>Chieちゃん

ははは、いや、そんなに大したことは起こらないんだけどね。。。しかし予想以上に長くなってしまってるよ、この訪問記。

>あさいくん

どうもありがとう!イメージどおりの感じですね。
ところで、あさいくん、ハングル読めちゃうの?すごいな~。

>ゾノくん

中国語版も、上の友だちの日本語訳と同じ感じで納得です。キル君にもよろしく!覚えてるかな、おれのこと……?

Posted by: こん at October 20, 2006 2:57 AM

いくつかはわかる単語があったのと、辞書を使ってみました。以前教室に通ってたもので。

Posted by: asai at October 22, 2006 1:12 PM

>asaiくん

そうか、以前習ってたんだ~。韓国語は日本語に近いって聞くし、機会があればちょっとでもやりたいなあと思いつつ、やっぱり言語はなかなか使う機会がないと、やる気がでないものだよね。中国語も生活できるレベルになっちゃうと、それから上のレベルへはなかなか上がらずです。。。

Posted by: こん at October 23, 2006 5:54 PM
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